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(83)落書き(上)―役人の顔

仕事中こっそり描いた?

 古代の都、藤原宮や平城宮の発掘調査では、役所の文書や帳簿として使われた木簡が数万点出土しています。当時の役人たちが、背筋を正して机に向かい、仕事に励む姿が目に浮かぶようです。

 ところが、彼らが筆で書いたのは、字ばかりではなかったようで…。仕事の合間に描いたとみられる、ラクガキもひょっこり出土します。

 ラクガキは、捨てる前の木簡や割れた土器などに描かれているのですが、一番多い題材は、なんと言っても人物画。そして、動物、幾何学文、とつづきます。今回は、その中から「役人の顔」を描いたものをご紹介しましょう。

 なぜ役人の顔ってわかるの? と思われるかもしれませんが、かれらは役人特有の頭巾をかぶっているので一目で見分けがつきます。ギョロリとにらんだ目、すました気取り顔、インテリっぽい口髭(ひげ)など、雰囲気がよく出ています。目の前にいる同僚を描いたのでしょうか。

 役人の顔のラクガキは、木簡や木の板に描かれたものが多く、土器には少ないようです。  授業中、ノートの隅に先生の顔を描くように、役人たちも書類を作成するふりをして、こっそりとラクガキを楽しんでいたのかもしれませんね。

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古代の落書きにみる役人のあんな顔、こんな顔

(奈良文化財研究所研究員 中川あや)

(読売新聞2014年12月7日掲載)