奈良文化財研究所に関するさまざまな情報を発信します。

文化財の展示

2014年11月

 あなたは博物館・美術館で展示を見ることは好きですか?

 私は、奈良文化財研究所の展示施設である飛鳥資料館で働いています。資料館の仕事は年数回行われる特別展・企画展の準備のほか、常設展示の管理、収蔵資料の整理、収蔵庫などの維持・整備、来館者の案内、文化財の調査・研究など、実に多岐に及びます。こうしたさまざまな仕事のなかでも、特に関心を持って取り組んでいるのが、やはり文化財の展示に関するものです。

 展示とは、文化財のほか、さまざまな「もの」を並べて多くの人々に公開することです。文化財の展示を行う上で、さまざまな分野の知識・経験が必要になります。考古学、歴史学、建築史学、文化財科学などによって培われてきた文化財そのものの歴史的背景や位置づけに関する研究成果のほか、展示室の設備を整えるための設計・造作やより魅力的な展示空間を造るためのデザインなども関わってきます。そのため、研究者以外にも設計・造作業者やデザイナーとともに、展示を造ることもしばしばあります。

 また、文化財の展示の仕事に取り組むうえで、他の博物館・美術館の方法や事例について学ぶとともに、文化財以外の分野の展示の手法を知ることもとても重要です。私は以前、ある美術館で見学したマンガの展覧会に非常に感銘を受け、自身の担当する展覧会でもその手法を参考にしました。「もの」をより魅力的に見せるという点では、スーパーやデパートなどの商業施設における商品の並べ方が参考になることもあります。分かりやすい表示方法という面では、街中の看板や標識がヒントになることもあります。このように「文化財」という枠組みにとどまらず、じつに日常のさまざまな場面のなかに展示のアイディアは隠されています。こうした「汎用性」こそが、展示の魅力ともいえるでしょう。

 最近では、文化財や考古学をいかに社会に還元するかを研究するパブリック考古学と呼ばれる分野も盛んになりつつありますが、博物館施設等における展示は、まさに学問的成果と一般社会の接点ともなるものなのです。

 残念なことに、文化財の展示に関する調査・研究は、学問としての発展が立ち遅れているのが現状です。しかしながら、同時に実にさまざまな可能性を秘めているものと私は考えています。多くの分野と連携して学問としての基礎を構築するとともに、展示を通じて社会一般に文化財を発信することに努めていかなければならないと日々痛感しています。

(飛鳥資料館研究員 丹羽崇史)

飛鳥資料館特別展の展示風景700.jpg

飛鳥資料館特別展の展示風景

(2014年春期特別展「いにしえの匠たち-ものづくりからみた飛鳥時代」)

月別 アーカイブ