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(49)みほとけの年輪

木材の情報 渦巻

 仏像の素材は様々です。なかでも木を用いた木彫仏は日本人に好まれたようで、平安時代以降の仏像のほとんどは木彫像です。年輪年代法はこうした木彫像にうってつけの調査手法です。

 具体例を挙げましょう。奈良・東大寺南大門の仁王像は、2000以上もの部材を組み上げた巨大な木彫像です。25年ほど前、解体修理の際におこなった調査の結果、仁王像の部材は鎌倉時代の1196年から1201年にかけて伐採されたことがわかりました。また、仁王像の部材の年輪のパターンが山口県下に伝わる木彫仏の年輪とよく似ており、材木は山口産と推定されました。

 実は、文献史料に仁王像は建仁3年(1203年)に仏師運慶らがわずか69日で完成させたと記されているばかりか、東大寺再興のための材が山口から伐(き)り出されたと記されており、年輪年代調査はこれを裏付けるかたちとなったのです。

 このように、年輪年代調査は、木材の年代や産地などの様々な情報を引き出すことができるのです。ところで、仏像を調査していると金箔(きんぱく)や彩色などで年輪を観察できないことがあります。そんな時のために、奈文研では特別な装置を開発したのですが、それについてはまた次回。

 

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東大寺南大門仁王像の年輪調査の様子

(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー 児島大輔)

(読売新聞2014年3月30日掲載)