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(46)文字の上手下手

ほんとに読めた?

 奈良時代のお経。1点1画が丁寧に書き写され、大きさもほぼ均等で、まるで活字のようです。奈良時代の人たちは、みなこのように美しく整った字を書いたのでしょうか。

 全国各地から平城宮へ運ばれた荷札の文字をみてみましょう。写真1の木簡は、お経のように整った文字の木簡です。でも、このように上手な文字の木簡はめずらしく、お世辞にも上手とはいえない木簡がたくさんあるのです。

 下手な字の代表は写真2の木簡。最初の文字の「上」は何とか読めますが、続く文字はなかなか難解です。答は「坂」「郷」「戸」「主」で、次の2文字はどうしても読むことができません。

 もう1点、写真3の木簡は、大きな文字で「幡磨国宍粟」と書かれていますが、「磨」の文字が「麻」と「石」の2文字あるようにみえます。みなさんが使っている漢字練習帳のマス目には、到底おさまらなくて、先生に注意されそうです。

 こんな文字を書いても、許してもらえたのですから、古代の人はおおらかですね。でも、読む人はちゃんと読めたのか、ちょっと心配になります。だって、1300年後の奈文研の研究員は、しょっちゅう木簡の文字が読めなくて、悩んでいるのですから。

 

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(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー 井上幸)

(読売新聞2014年3月9日掲載)

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