形や質感 未来に伝え
奈良にはたくさんの「文化財」がありますが、その種類や材質、形状、大きさなどは実に様々です。そうした文化財をわかりやすい姿で写しとめる方法が「文化財写真」です。
奈文研には文化財写真の撮影を担当する職員がいます。それが私たち文化財写真のカメラマンです。私たちは、写真を通して文化財の形や質感がわかりやすく伝わるように、常にカメラの角度や光の当て方を考えながら撮影をしています。
これまではフィルムカメラで写真撮影をしてきましたが、最近ではフィルムが少なくなり、皆さんと同じようにデジタルカメラでの撮影が多くなってきました。フィルムには保存方法が確立されているという、デジタルカメラよりも優れた点があり、失われていくのが惜しまれます。一方、デジタル写真は現像が不要で、撮影した画像をデータとして整理保管しやすい長所があり、木簡などの文字を鮮明にする赤外線写真撮影にも適しています。
奈文研はこれまでに撮影した36万枚もの文化財写真フィルムを保管していますが、それを未来にどう保存し活用していくかが大きな課題となっています。
経年変化が進む文化財や、既に失われてしまった文化財を写した写真は、写真そのものが「文化財」としての価値をもっています。私たち文化財写真のカメラマンは、日々進歩する写真技術に対応しながら、これからの文化財写真のあり方を考えています。
文化財の写真を撮影する中村さん
(奈良文化財研究所写真室主任 中村一郎)
(読売新聞2014年3月2日掲載)