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「古代建築」の「現代」

2014年9月

 奈良県は文化財の宝庫です。仏像、建造物、遺跡、歴史資料など、まさに文化の中心であったことを実感させられる場所です。日本の歴史を伝える文化財を求めて、日本国内だけではなく、海外からも多くの観光客が訪れる場所です。

 建造物に注目してみると、奈良時代以前に建てられたとする建造物が奈良県に集中することがわかります。世界最古の木造建築である法隆寺金堂をはじめ、薬師寺東塔、唐招提寺金堂などなど、一度は皆さんも訪れたことがあることでしょう。すでに失われた古代の姿をのこすこれらの建物は、歴史に興味がない人でも日本文化の象徴のひとつとして心に刻まれているはずです。

 これらのいわゆる「古代建築」は、しかし古代から全く姿を変えずに現在まで残っているわけではありません。災害や老朽化などで、何度も修理が加えられており、その都度新しい材料や技術が用いられてきました。屋根が傷めば新しい瓦で葺き替え、部材が傷めば取り替えるといった具合です。また木造建築は2~300年単位に部材を解体して修繕をして組み直すという解体修理も必要です。このような修理工事は、建物を維持し使い続けるために現在までずっと続けられてきた非常に重要な仕事なのです。

 建物の内部を見てみると、後世の修理によってその時代の新技術が多用されていることがわかります。たとえば法隆寺金堂。屋根を二重に葺いた重層建築で一見二階建にみえますが、本尊を安置している初重の屋根より上の部分には骨組みだけで2階部分はありません。建立当初はこの部分には何もなくで、現在は貫を多用した材が組み込まれています。これは後世に補強のために挿入されたものであることが明らかとなっています。この補強材自体も、現在は昭和20年代の解体修理の際に新調されたもので、それ以前ものは慶長8年(1603)の大修理時のものであったとみられています。構造的にも非常に有効であり、おそらくそれ以前にも似たような構造の補強材が組み込まれていたのではないかと思われます。

 現代の保存修理工事でももちろん新技術は取り入れられています。コンピュータ解析による構造診断、レーダー探査による地盤の調査、X線を使用した非破壊調査など、修理計画のために建物を調査する段階から最新技術が多用されています。また修理に直接携わる大工さんの使用する道具も、古代とは大きく様変わりしています。ノミやヤリガンナ、チョウナなどの伝統的な道具ももちろん使いますが、電動丸ノコやインパクトドライバーといった便利な道具も使用します。私は以前修理工事現場でお世話になった大工さんの言った言葉が忘れられません。

 「昔の人だって、こんな(現代の)道具があったら絶対使ってたで。」

 目の前にある「古代建築」は、ただの文化財ではありません。現在も使用され続けている「現役」の建物であり、それを支える人々や技術は現代のありったけの技術と知恵を駆使して建物を守ろうとしているのです。そういう意味では、「古代建築」も、じつは「現代建築」のひとつなのかもしれません。

法隆寺金堂の補強材.jpg

法隆寺金堂の補強材(赤く塗っているところ)

 

      (都城発掘調査部研究員 大林潤)

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