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(43)土馬

水に関わる場所で出土

 土馬とは、馬の形をした土製品です。平城京では、道路の脇を流れる溝や運河から出土することが多く、水に関わる祭りに使われたようです。一体何のために使われたのでしょうか。

 土馬の用途については二つの説があります。一つ目は、恐ろしい災厄をもたらす疫病神を土馬に乗せて、穢(けが)れとともに水に流したとする説です。古代の人々は、疫病神は馬に乗って行動すると考えました。

 二つ目は、雨乞(あまご)いの祭りに使われたとする説です。『日本書紀』には雨乞いのために牛馬を殺し、諸社で祭りをするという記事があります。また、『続日本紀』には、国の禁止にもかかわらず、牛馬の屠殺(とさつ)が止まらないため、新たな罰則を科すという記事が見られます。これらの記事を参考にすると、土馬は生馬の代用品として、雨乞いの祭りに使われた可能性も考えられます。

 多くの土馬は一部を欠損して出土します。雨乞いの祭りで壊されたのかもしれません。それとも壊すことで疫病神の力を封じ込めようとしたのでしょうか。

 奈良時代には木製の馬形や絵馬もあり、馬が単なる乗り物ではなく、祭りにも深く関係する動物であったことがわかります。

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平城宮跡で出土した土馬

(奈良文化財研究所研究員 大澤正吾)

(読売新聞2014年2月16日掲載)