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(42)ケガレや災いを払う人形

悪気引き取り 流れ去る

 人形と書いて、ここでは「ひとがた」と読みます。文字通り人間の全身をかたどったもので、紙や木、金属などで作られたものがあります。

 むかし、平城京に暮らした人々は、病の原因となる穢(けが)れや災いを払うために、あるいは呪いをかけるために、木や金属の人形を用いました。なでたり息を吹きかけたりして穢れや悪気を人形に移し、水に流して使うことから、遺跡から出土する場合には、溝などの水と関わりの深い場所から見つかります。

 昭和55年(1980年)、平城宮の壬生門(南面東門)の前に位置する二条大路の北側溝から、207点におよぶ木製人形が、8世紀の天平年間ころの木簡や土器などとともに発掘されました。これらの人形は、いったいどのように用いられたのでしょうか。

 平城宮の時代よりやや後の、平安時代の書物には、朱雀門と壬生門のあいだの大路で、「大祓(おおはらえ)」という儀式が行われたことが書かれています。

 「大祓」は、人々の犯した罪や災気を払うために毎年6月と12月の晦日(みそか)に行われる国家の儀式のことです。二条大路北側溝から見つかった大量の人形は、この儀式に用いられたものと考えられます。207点の人形にこめられた様々な祈り、はたして、叶(かな)ったのでしょうか。

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平城宮跡出土の木製人形

(奈良文化財研究所研究員 庄田慎矢)

(読売新聞2014年2月9日掲載)

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