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(39)湧き出る井戸

過去の情報 脈々と

 人間が生活する上で飲料水の確保は欠かせません。縄文時代までは、川水や自然湧水を生活用水に利用していましたが、弥生時代になると地下水をくみ上げる井戸の利用が始まります。

 藤原京や平城京が建設され、この人工都市に数万の人々が集住しはじめると、大量の飲料水が必要になりました。上下水ごとにインフラを整えるのは大変で、水源を地下水に頼ることになります。そこで藤原京や平城京では宅地ごとに井戸が設けられました。

 藤原京や平城京では、木製の井戸枠をもつ井戸が一般的です。中には、大木をくりぬいたものもありますが、多くは木材を組み合わせており、木造建築と同じ技術が使われました。建築材をリサイクルした井戸枠も数多く発見されています。

 井戸が役目を終えると、格好のゴミ捨て場となります。古井戸や井戸枠を抜きとった穴に、不要品が捨てられました。井戸を発掘すると、土器や木製品、木簡、銅銭などが出土することが多く、これらの遺物が、井戸の使われた年代や、井戸をめぐる祭祀(さいし)、生活の様子を私たちに語りかけてくれます。水は枯れ、埋もれてしまっても、今なお井戸から過去の情報が湧き出ているのです。

 

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平城京最大の井戸

(奈良文化財研究所研究員 海野聡)

(読売新聞2014年1月19日掲載)

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