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建物か、塀か・・・

2014年8月

 発掘調査を実施すると柱穴や溝、井戸など、かつて人が活動していたことを示す遺構を検出することができます。学生時代、初めて発掘調査に参加した際、土坑を検出、掘り下げたところ、板を井桁に組み合わせた井戸であることが判明、その底からは当時の生活を示す土器や木製品などが出土、肌で歴史を実感し少なからぬ感動を覚えたことを20年以上経過した今でもよく憶えています。

 当研究所の発掘調査は、考古学を専門とする研究員のほか、建築史や日本史、庭園史などを専門とする研究員がチームを組んで実施しています。かくゆう私は建築史を専門としており、検出された柱穴を建物や塀にまとめる作業や建物や塀の位置関係から時期変遷を検討するなど、建築史の立場から遺跡を把握することに努めています。

 発掘現場によっては、掘立柱の柱穴が複数、重複する形で検出されることもあれば、まばらに検出されることもあります。まばらであれば、これら柱穴が建物を構成するものなのか、あるいは塀なのか、把握することはそれほど難しい作業ではありません。

 しかし、数多くの柱穴が重複して検出される場合、どれとどれが一連のものなのか、建物なのか塀なのか、様々な要素をもとに検討していきます。

 藤原宮や平城宮で検出される建物は柱間寸法が桁行、梁行ともに一定となるものが大多数です。したがって、柱間寸法が一定で柱筋の揃う柱穴は一連のものと考えられます。柱間寸法以外では柱穴の大きさや深さ、柱が抜き取られているのか否か、抜き取られていれば、どの方向に抜き取られているのかなど、複数の要素をもとに柱穴を建物や塀にまとめていきます。ところが、同じ建物であっても柱穴の大きさや深さが異なる場合もあります。

 平城宮跡東院庭園のエントランス及び管理施設として整備された西建物SB9360(第120次調査)では柱穴の大きさや深さが2種類存在しました。西建物は桁行7間×梁行2間の身舎の西側に廂がつく桁行7間×3間の建物です。柱間寸法は身舎が約3m等間、廂の出は約4.2mです。身舎柱の掘方は一辺約1.4mの隅丸方形、深さは遺構面から1.4~1.5mとかなり大きいですが、廂柱の掘方は一辺0.6~0.8㎝の隅丸方形、深さも約0.7mと身舎柱に比べると小規模です。この違いから7間×2間の建物の前面に塀が建っていたと考えることもできますが、西建物では周辺の建物配置などから一連のものと判断、身舎と廂で屋根構造・屋根葺材が異なっていたと考え、身舎は檜皮葺、廂は板葺の建物に復原整備しています。  

 このように一筋縄ではいかない場合も多々あります。発掘調査では柱穴や土坑などを検出する傍ら、建物や塀にまとめる難解なパズルを解くような作業も同時におこなっています。その成果の一端は現地説明会で発表することになりますので、現地説明会にご参加いただき、パズルを解く作業の難解さを実感してみてください。

数多くの柱穴第120次調査(中央上半にSB9360).jpg

数多くの柱穴が重複して検出された第120次調査(中央上半にSB9360)

 

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多くの柱穴を建物や塀にまとめる(赤線はSB9360)

      (都城発掘調査部 主任研究員 西山和宏)