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(34)奈良と世界遺産

三つの「宝」 地域に活力

 「世界遺産」ということばを聞いたことがありますか。今から40年ほど前に、世界の国々が協力して、人類にとって価値がある文化遺産・自然遺産を保護するために作られた国際的な制度です。

 世界遺産の数は、現在、981件。日本には17件があり、奈良県内にも三つの世界遺産があります。

 その一つ「古都奈良の文化財」は、奈文研が半世紀にわたって調査研究を進めてきた平城宮跡をはじめ、東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、薬師寺、唐招提寺などの寺社と、春日山原始林が含まれます。

 また、「法隆寺地域の仏教建造物」は、世界最古の木造建造物群として、1993年に姫路城や屋久島とともに日本で最初に世界遺産登録されました。残りの一つは、奈良県と和歌山県、三重県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」です。

 世界遺産になると、国内外からたくさんの観光客が訪れます。地域が経済的に豊かになる一方で、国際社会からは「本物」をしっかりと残していくことが求められます。

 世界遺産であってもなくても、文化遺産や自然遺産は未来へ受け継ぐべき大切な宝物です。それでも、世界遺産というブランドは、多くの人々を惹(ひ)きつける特別な魅力があります。その上手な付き合い方を、これからも奈文研は調査研究していきたいと思います。

 

(34)奈良と世界遺産_読売撮影.jpg

東大寺の境内にある世界遺産を示す石碑(奈良市で)

*世界遺産の数(合計/日本)については記事掲載時点(2013年12月8日)のデータ。

(奈良文化財研究所特別研究員 菊地淑人)◇写真・読売新聞社ご提供

(読売新聞2013年12月8日掲載)

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