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(32)平城京の街路樹

高さ10メートル 都の偉容表現

 広大な平城京には縦横に直線道路が設けられ、碁盤目状に区画されていました。主要道路である大路の幅は14~37メートルほどでしたが、平城京最大の朱雀大路は、長さが4キロ弱、幅は75メートルもありました。大阪の御堂筋の長さが4キロ、幅が44メートルですから、1300年前の大路がいかに大きかったがわかります。

 さて、平城京の大路には、両側に排水溝が設置され、街路樹が植えられていました。樹木の種類はヤナギ、エンジュが多かったようです。ヤナギは万葉集の大伴家持の歌にみえ、エンジュは二条大路で出土した木簡の記述から推測できます。最近では、道路の側溝で発掘された花粉の分析からムクゲやセンダンなども植えられていた可能性が考えられています。これらの樹木はいずれも高さ10メートルをこえる落葉樹です。

 なかでも、エンジュやムクゲは中国原産で、当時の日本には自生していませんでした。平城京のモデルとなった唐の都では、ヤナギ、エンジュのほか、ハルニレや果樹などが街路樹として植えられていました。エンジュやムクゲは唐の都にならってわざわざ輸入したのでしょう。

 平城京には宮内や大寺院をのぞけば、高さが10メートルをこえる建物はほとんどありません。したがって、数キロもつづく直線の並木道が京内のいたるところから見渡せたはずです。街路樹は大路を彩るだけではなく、都の偉容(いよう)を表現するための重要な舞台装置だったと考えられるのです。

 

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朱雀門の前に植えられたヤナギ(奈良市の平城宮跡で)

(奈良文化財研究所主任研究員 今井晃樹)

(読売新聞2013年11月24日掲載)