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(26)掘らずに遺跡を探る(下)

 土の中は、人間の目が物を見るために必要な光を通すことができません。その代わりに地中を通ることのできる電気や振動を使ったり、地中のものが発する磁気を測定することで、土の中の様子を探ろうというのが、物理探査と呼ばれる方法です。

 具体的には、地中に電気を流して抵抗を計る電気探査、振動の伝わりを計る地震探査、磁気の異常を計る磁気探査など、様々な方法があります。最近では、電磁波を用いた地中レーダー探査によって、建物の柱の位置やおおよその深さまで知ることができる成果が増えてきました。

 例えば、東大寺(奈良市)の東塔院跡の地中レーダー探査では、地中に埋もれた塔の基壇の痕跡や、塔の周りを廻(めぐ)る回廊と門の様子を明らかにすることができました。この探査法では、地下をスライスするように深さごとの状況もわかるので、得られた情報を発掘調査計画の立案や、遺跡の保護にも役立てることができます。

 地下探査で得られる情報は、実際にものを掘り出す発掘調査の情報には及びません。しかし、遺跡の状況を改変することなく、広い範囲を短時間で探査できるという点が高く評価され、活躍の場が全国に広がっています。コンピューターや科学技術が目まぐるしく進歩する今日。地下探査の方法や技術もさらに向上し続けることでしょう。

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アンテナを引いて、東大寺東塔院の地中をレーダー探査している様子(左下)

その成果(右上)からは、塔の基壇や階段、回廊が地下に残っていることがわかる

(奈良文化財研究所主任研究員 金田明大)