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(25)掘らずに遺跡を探る(上)

空撮画像から位置分析

 土の中に埋もれている遺跡。その中身を探るにはどうすればいいでしょう?

 一番確実な方法は土を掘ってみること。そう、発掘です。昔の人々の暮らした跡や使った道具を掘り出す発掘は、わくわくする作業です。

 でも、遺跡は一度掘り返すと、同じ状況には二度と戻りません。歴史がたくさん詰まった大切な遺跡を壊さずに長く残したい、でも中身を知りたい、考古学の研究者はいつもそんな悩みを抱えています。そこで、奈文研は、掘らずに遺跡の情報を探る「遺跡探査」の研究を進めてきました。

 遺跡探査の最も簡単な方法は、飛行機や人工衛星で撮影した画像の分析です。これを判読と呼んでいます。植物の生えかたの違いや、地面の凹凸から、埋もれているお城や古墳を観察できることがあります。奈良の地図や画像からは、平城京の時代の道路や町割りの跡を読み取ることができます。これらの情報は、インターネットなどで入手可能ですから、遺跡探しに挑戦してみてはいかがでしょうか。

 しかし、この方法は条件にあった場所でのみ有効で、知りたい場所を探ることが必ずしもできるわけではありません。そこで、物理的な方法で地中を探る研究も進めています。次回はその方法を紹介しましょう。

 

(25)掘らずに遺跡を探る上.jpg

地形図から平城京の道路の痕跡を検討した「平城京条坊総合地図」

(奈良文化財研究所主任研究員 金田明大)

(読売新聞2013年10月6日掲載)

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