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(19)地を鎮める祭り

土器の中 込めた祈り

 皆さんは「地鎮祭(じちんさい)」を知っていますか? 家を建てる時に、土地の神様を鎮(しず)め、その許しを得るための祭りです。地鎮祭は今でも広く営まれていますが、その始まりは、およそ1300年前の藤原京の時代にさかのぼります。今回は、古代の地鎮祭のお話です。

 古代の人々は、神様を怒らせると、たたりや災いを起こすと考えていました。このため、土地を掘り起こしたり、建物を建てたりする前に地鎮祭を営んで、神様に工事の安全と建物の無事を祈りました。

 地鎮祭で神様に捧げられたのは、お金やガラス玉、金箔(ぱく)、水晶などの貴重品。これらは五宝、七宝と言われる品々で、土器に入れ、敷地の中央や四隅に小さな穴を掘って埋められました。また、稲や麦、大豆などの五穀も供えられたようです。

 こうした地鎮祭の遺構は、橿原市の藤原京跡や奈良市の平城京跡など、古代都城の発掘調査で数多く見つかるようになってきました。発掘された地鎮祭の土器には、古代人の祈りが詰め込まれているかのようです。

 建設する家の無事を願う祈りは、古代から現代まで途切れることなく続いているのです。

 

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土器に入れられていた富本銭と水晶。藤原宮で営まれた地鎮祭のものらしい

(奈良文化財研究所主任研究員 森川実)

(読売新聞2013年8月25日掲載)