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大雪の影響

2014年6月

 今冬は、日本各地で大雪に見舞われました。被害にあわれた方には、謹んでお見舞い申し上げます。

 我々の研究室がある奈良市内でも、膝くらいまでの積雪があり、そのため交通機関の乱れなどがありました。しかし、例年このような雪模様にならない奈良では、おそらく雪を楽しんだ人も多かったのではないかと思います。そこここで雪だるまを見かけ、私も息子と小さいものをいくつか作りました。

 様々な影響をもたらしたこの大雪は、私たちが行っている研究に思わぬ副産物をもたらしました。それは『倒木』です。

 私が所属している年代学研究室は、年輪年代学の研究に取り組んでいます。年輪年代学では、木の年輪変動を調べることで、1年精度で誤差のない年代測定ができます。そのため、木製文化財の年代測定に非常に重要な分野となっています。このような年輪年代測定を行うには、年輪が形成された年がわかっている現生木から遡った年輪変動のデータを蓄積しなければなりません。それも、1つの地域のものが日本全域を網羅できるのではなく、各地でたくさんのデータを集めた方が、より質の高い研究につながることとなるのです。

 現生木は、山に行けばたくさんあるように思われるかもしれませんが、その年輪を調べるには生きている木を傷つけなければなりません。しかも、年輪数が多い高樹齢の大木は、傷つけてまで調査を行うには抵抗があるものです。そこで、大雪の影響で不幸にも倒れて枯死してしまった木は、年輪を調べるには絶好の対象となります。写真はその調査の様子ですが、この倒木は胸高直径が110cmで、250年の年輪が刻まれていました。一見、文化財とは関係ないように思われる作業が、とても重要なデータの蓄積につながることとなるのです。

 時季は移り、新緑がまぶしい季節となってきました。冬の間は休止していた木の成長も、再び盛んに行われている頃です。今年はどんな年輪ができるのか、毎年の楽しみになる季節です。

 

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大雪で倒れた木から円板試料を切り出している様子(長野県)

 

      (埋蔵文化財センター  研究員 星野安治)

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