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(18)平城宮の瓦作り

大量生産のジレンマ

 屋根に瓦をふいた家は現在、普通に見られます。しかし奈良時代には、瓦は貴重で、瓦ぶきの建物は、宮殿や寺院、役所に限られていました。

 中でも奈良時代の平城宮(奈良市)では、膨大な量の瓦が使われました。2010年に復元された第1次大極殿にふかれた瓦は、なんと10万枚にも上ります。平城宮全体では、おそらく数百万枚の瓦が使われたことでしょう。

 日本で最初の瓦ぶき宮殿は、平城宮の前の藤原宮(橿原市)です。その瓦は県内だけでなく、香川県や滋賀県にあった瓦工場でも作られました。しかし、瓦を都まで運ぶのが大変でした。そこで平城宮の建設時には、平城京の北側にある奈良山丘陵一帯に工場を設け、集中的に生産しました。

 瓦の役割の一つは、雨から建物を守ることです。奈良市にある元興寺極楽坊本堂の屋根には、1400年前の飛鳥寺の瓦が今も使われ、飛鳥時代の瓦の質の高さを伝えています。

 しかし、平城宮の瓦は、短期間に大量生産されたためか、あまり頑丈ではなく、とても1000年ももちそうにありません。

 瓦職人たちは、品質よりも量を優先した瓦作りに、きっと苦しみ悩んだに違いありません。

 

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大量生産された平城宮の瓦

(奈良文化財研究所研究員 石田由紀子)

(読売新聞2013年8月18日掲載)

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