奈良文化財研究所に関するさまざまな情報を発信します。

(17)奈良の文化的景観

自然と人の共同作品

 奈良らしい風景。それは大きな寺院があって、その前に鹿のいる風景だけではありません。

 例えば、柿の木や梅が谷間を埋める五條市の風景、茶せんの材料となる竹林が風に揺れる生駒市高山の風景、そうめんを寒干しする桜井市の冬の風景など、個性豊かな風景が県内各所に見られます。

 このように、地域に住まう人々が風土や自然環境に適応しながら、長い年月をかけて築き上げてきた風景には、地域特有の美しさがあります。

 2005年、こうした風景を「文化的景観」と名付け、文化財として守る取り組みが始まりました。国は特に重要なものを「重要文化的景観」として選び、保護しています。

 明日香村南東にある稲渕の棚田を中心とする地域が「奥飛鳥の文化的景観」として、11年に県内初の重要文化的景観に選ばれました。自然と人間の共同作品とも言える文化的景観は、自然と風土に溶け込んだ、日本人の暮らしや文化の証しそのものと言えるでしょう。

 奥飛鳥に広がる棚田では、今年も農家の方々が田植えをし、手入れすることで、人と自然の良い関係が受け継がれています。

 

(17)奈良の文化的景観.jpg

棚田が広がる「奥飛鳥の文化的景観」(明日香村稲渕で)

(奈良文化財研究所研究員 惠谷浩子)

(読売新聞2013年8月4日掲載)

月別 アーカイブ