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(16)荷札のささやき

特産品担ぎ いざ都

 次の遠足は、歩いて東京に行くことになりました――。なんて学校の先生が言い出したらどうします?

 でも、電車も飛行機もなかった奈良時代、人々は全国から歩いて平城京にやってきました。それも税金を払うために。昔は税を、米や布などの品物で納めていました。しかも、それを運ぶのも税のうちでした。

 平安時代の「延喜式」という本を参考にすると、例えば東京(武蔵国)から奈良(大和国)まで、片道1か月の大旅行。わぁ、たいへん!・・・あれ、帰りは半分の2週間ぐらいで着けるみたい。なぜでしょう?

 そう、荷物を税として納めてしまい、帰りは身軽になるからです。それにしても行きは2倍もかかるなんて、いったいどれほど重い荷物を運んだのでしょうか。

 奈良市の平城宮跡からは、荷物に付けた木の札「荷札木簡」が、たくさん見つかっています。米や塩、カツオ、ワカメ、アユ、アワビなど、全国の特産品が勢ぞろい。人と物に満ちた平城京のにぎわいが目に浮かびます。でも、それだけではありません。

 荷札たちのささやきに耳を傾けてみましょう。遠い故郷の風景と、都への長い旅路の苦労話を、きっと聞かせてくれることでしょう。

 

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「伯耆国(現在の鳥取県西部)」から運ばれた「若海藻(ワカメ)」に付いていた荷札木簡

(奈良文化財研究所研究員 山本祥隆)

(読売新聞2013年7月28日掲載)

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