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(14)馬を乗りこなす

朝鮮半島から大量輸入

 皆さんは平城宮跡資料館に行ったことがありますか。資料館の下からは、馬を管理する「馬寮(めりょう)」という役所の跡が発掘され、馬小屋や馬の水浴び場の痕跡が見つかっています。

 奈良時代、馬は移動や運送に利用されましたが、最も重視されていたのは軍事力でした。このため、各地に国営の牧場が設けられ、そこで育った馬が馬寮に送られてきたのです。

 ところで馬は、元もと日本列島にいた動物ではありません。5世紀頃に大陸からやってきました。といっても、海で周りを囲まれた日本列島に馬が泳いできたわけではありません。

 かつては、この頃に大陸から騎馬民族が大挙して侵入し、列島を征服したと考えられたことがありました。しかし、いくら発掘しても、戦いや征服の証拠は確認できません。どうやら、この時期、馬が積極的に輸入され、馬の飼育に慣れた渡来人とともに大量の馬が船で海を渡ってきたようです。

 当時の豪族たちが馬を欲し、朝鮮半島南部の国々が馬の輸出に協力した、というのが実状だったようです。渡来人のおかげもあってか、日本列島の人々が馬をうまく乗りこなすまでに、さほど時間はかからなかったようです。

 

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(奈良文化財研究所研究員 諫早直人) ◇イラスト・岡本友紀

(読売新聞2013年7月7日掲載)