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(10)瓦の文様

古いほどシンプル

 古代の宮殿や寺院を発掘すると、瓦が大量に出土します。

 価値のないものの例えに「瓦礫(がれき)」と言いますが、私たち考古学研究者にとって、瓦はとても大切な研究資料です。特にハスの花をかたどった蓮華(れんげ)文や、つる科の植物の唐草文で飾られた軒先の瓦は、昔から古美術品としても価値がありました。

 蓮華文や唐草文は、遠くインド以西から伝わった異国の文様です。しかし、ただの異国情緒あふれる文様と侮れません。時代や地域ごとに特徴があり、遺跡や建物の年代を知る重要な手がかりとなるからです。

 蓮華文の瓦を見てみましょう。シンプルな花びらもあれば(素弁)、別の模様が加わって少し手の込んだもの(単弁)、花びらが二つセットになった複雑なもの(複弁)もあります。

 6世紀末に建てられた日本最古の寺院・飛鳥寺(明日香村)の瓦は、とてもシンプルな文様ですが、8世紀の平城宮の瓦は、より複雑になっています。時代とともに、シンプルなものから複雑なものへと変化しているのです。

 博物館に行ったら、こうした文様の瓦を探してみてください。瓦の年代を言い当てると、きっと皆が驚くに違いありません。

 

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蓮華文で飾られた様々な瓦

(奈良文化財研究所研究員 森先一貴)

(読売新聞2013年6月16日掲載)