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復興調査への支援(宮城県気仙沼市・波怒棄館遺跡)

 現在、東日本大震災の被災地では、復興事業に伴う発掘調査が数多くおこなわれています。そして、津波の被害を受けた沿岸部には、縄文時代の貝塚が埋没している可能性があります。貝塚は、土器や石器などの遺物とともに、貝殻に含まれるカルシウムの影響によって通常の遺跡では残りにくい人骨や動物骨、骨角器が保存されており、過去の人々の暮らしを知る上で非常に多くの情報を与えてくれます。したがって、貝塚をやむを得ず発掘する場合には、円滑な復興と埋蔵文化財保護の両立を図るために、迅速かつ効率的な調査をおこなうことが重要な課題となります。
 

波怒棄館遺跡(宮城県気仙沼市)

 宮城県気仙沼市の波怒棄館遺跡では、高台への集落移転(防災集団移転促進事業)に伴う発掘調査によって、保存状態の良好な縄文時代前期の貝塚が見つかりました。迅速な発掘調査を実施するため、奈良文化財研究所では現地に職員を派遣して、宮城県や気仙沼市の職員や全国からの派遣職員の皆さんとともに、効率的に調査が進められるように作業をおこないました。
 
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●波怒棄館遺跡での作業
 
 この発掘調査には多くの地元の方々が作業員として参加されていました。初めて貝塚の発掘調査に参加された方が多かったので、発掘する際の留意点を伝えるとともに、今回の調査で明らかとなる成果についても説明しました。地元や全国の皆さんのご尽力によって、波怒棄館遺跡の発掘調査は予定された期間の中で無事に終了しました。
 
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●作業員さんへの説明
 
 波怒棄館遺跡では、縄文時代前期の貝層からマグロの骨が大量に出土しました。推定体長が2m以上になる大きなマグロの椎骨も見つかっています。3~6個程度の椎骨がつながった状態で出土しており、漁獲したマグロの胴部を分割していたことがわかります。実際に、解体した痕跡が残されている椎骨や石器が刺さった椎骨も見つかりました。
 こうした発掘調査で得られた成果を皆さんに伝えるため、出土資料を写真撮影し、展示解説の文章を作成しました。撮影した写真は「平成25年度宮城の発掘調査パネル展」や「発掘された日本列島2014」で活用されています。今後は、出土資料の整理作業や発掘調査報告書の作成を継続的に支援していく予定です。
 
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●波怒棄館遺跡から出土したマグロの骨

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