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(8)蒸して食べる

7000年前 中国に起源

 最近、タジン鍋やシリコンスチーマーといった、油を使わずに調理できる蒸し調理器具が話題になっています。モノを蒸す調理法は、形を崩さずに素材の持つ美味しさをそのまま生かせるだけではなく、お酒やお茶を作る際にも欠かせない調理法です。

 この「蒸し調理」、実は東アジアで発達した調理方法なのです。

 蒸し調理の起源は、今から6000~7000年前の中国新石器時代にまで遡り、黄河流域の遺跡から、粘土で作った蒸し器がわずかながら発見されています。それ以前は、ゆでる、煮る、焼くといった調理法が基本だったと考えられています。

 日本へは中国東北地方、朝鮮半島を経由してこの調理法が伝わりました。最初に蒸し調理が行われたのは3世紀頃の北部九州。福岡市の西新町遺跡から土製蒸し器が出土しています。実に4000年余りの時を経て、ようやく日本にまで到達したことになります。

 しかし、この後、日本では蒸し調理は廃れ、全国的な普及はそれから数百年後のことでした。

 今では日本料理とは切っても切れない蒸し料理。普段、何気なく接している蒸し料理にも、数千年にわたる人々の営みが隠されているのです。

 

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酒造りのため蒸される大量の米。蒸し調理は酒造りにも欠かせない(奈良市の正暦寺で)

(奈良文化財研究所研究員 庄田慎矢)◇写真・読売新聞社ご提供

(読売新聞2013年6月9日掲載)