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(6)南の島の考古学

3000年前 カヌーで移住

 私は奈良文化財研究所の仕事のかたわら、年に1、2度のペースで南太平洋の島々に出かけています。同僚には「いいですね」とうらやましがられるのですが、実はそこで考古学の調査をしています。フィジーやタヒチ、ハワイといった島々に、いつ、どうやって人間が渡っていったのか、それを調べているのです。

 かつては、船が難破して偶然島に漂着したと考えられてきました。しかし、島々の遺跡から出土した土器や釣り針を詳しく調べると、今から3000年ほど前から、同じ文化を持った人々が計画的に島々に移住した歴史が明らかになってきました。

 彼らは丸木をくりぬいたカヌーで航海しましたが、ただの丸木舟ではありませんでした。船体の横に浮き木を取り付けた「アウトリガー・カヌー」を用いたのです。これよって舟の安定性が増し、多くの荷物を積むことができました。

 カヌーには、彼らの主食であるサトイモやヤムイモの種芋や、豚、犬、鶏などの家畜を積んで、おそらく家族単位で乗り込んだと思われます。それはまさに新天地に向かう「ノアの箱舟」のような航海だったことでしょう。

 

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(奈良文化財研究所研究員 石村智) ◇イラスト・岡本友紀

(読売新聞2013年5月20日掲載)

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