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(5)ミニチュアの世界

ままごと用?謎の土器

 奈良時代の土器に、5~10センチぐらいのとても小さいものがあります。私たちはミニチュア土器と呼んでいます。実際に使うにはあまりに小さく、何に使ったのか、よくわかっていません。

 中でも特に多いのは、竈(かまど)、甕(かめ)、甑(こしき)の3点セットです。竈で火を炊いて、甕と甑で米などを蒸す、いわば炊飯セットです。

 古代の人々は、奈良時代よりずっと昔から竈の神様を信仰していましたから、神様を祭る道具と考えられています。

 次に多いのは壺(つぼ)です。いろいろな形のものがあります。墨を硯(すずり)でする時の水差しなど、少量の液体を入れるのに使われたものもあるようです。

 このほかにも、皿や蓋(ふた)、高杯(たかつき)などの食器があります。実際の食器としては使えません。これらの用途も祭りの道具と考えられてきました。しかし私は、この中に子供の「おもちゃ」があるのではないかと考えています。

 奈良時代と同じ頃の中国では、ミニチュアの食器や人形のおもちゃがありました。どれも本物そっくりに、とても丁寧に作られています。こうしたミニチュア土器を見ると、作った人々の遊び心と愛情が伝わってくるようです。

 

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おもちゃの可能性もあるミニチュア土器

(奈良文化財研究所主任研究員 神野恵)

(読売新聞2013年5月12日掲載)

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