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東日本大震災 復興調査への支援

 現在、被災各地では復興事業の本格化に伴い、多くの発掘調査がおこなわれています。発掘調査の迅速化に向けて、全国の地方公共団体から派遣された多くの専門職員の方々がその支援にあたっています。

 こうした状況を受け、奈文研としても、発掘調査関連技術による支援をおこなうこととしました。25年度は、岩手県陸前高田市、宮城県気仙沼市、福島県広野町、同県南相馬市から支援要請が出され、技術支援や職員派遣をおこないました。広野町へは26日間で延べ53人、南相馬市へは52日間で延べ107人の職員を派遣し、発掘調査などを支援してきました。

奈文研の支援事業は端緒についたばかりです。被災地が落ち着きを取り戻す日まで、所員一同、できる限りの支援をおこなっていく予定です。

 

福島県双葉郡広野町

 広野町は福島県の沿岸部、浜通り南部の町です。江戸時代には浜街道広野宿の宿場町として栄えた歴史ある町です。また、1997年には日本サッカー界初のナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」が町内に建設され、サッカーを応援する町でもあります。

 

発掘調査の経緯と概要

 震災以前には遺跡として周知されていませんでしたが、災害公営住宅の建築工事に先立ち試掘調査を実施したところ、遺跡の存在が明らかになりました。そこで、2012年12月21日から本格的な発掘調査がおこなわれました。奈文研は、2013年4月8日から5月30日まで常時2名を派遣し、発掘調査を支援しました。

 奈文研が担当した4区では、奈良時代に掘立柱建物5棟が直線上に並んでいたことがわかりました。こうした計画的な建物配置は古代の役所跡と共通しており、当遺跡は駅家に関連する可能性があります。

  

復興調査における遺跡の保存と活用

 広く住民の方々に遺跡を知ってもらうために、調査中には現地説明会の開催や地元小学生を対象とした体験発掘をおこないました。また、広野町は遺跡の重要性を鑑みて、遺跡の中心となる4区の現状保存を決定しました。現在、広野町では地域の歴史文化に触れることができるような整備・保存の方法を検討しているところです。

 地域の宝である遺跡は新鮮な感動と郷土に対する愛情を深め、地域の絆を取り戻し、誇りある郷土を再生していく原動力となるのではないでしょうか。さらなる調査の迅速化に取り組み、復興事業と共存することで、遺跡が復興のシンボルともなるでしょう。

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発掘調査の記録写真

 発掘調査の写真は、検出した遺構や調査区の全体像を把握しやすいように高い場所から撮影されます。通常、この高所撮影はタワーや高所作業車を使用します。ただし、場所の移動などで時間がかかり、実際に撮影者が高所に登ることによる危険性も少なからずあります。

 

高所撮影用ポール装置の開発

 「早く・高精度に・安全に」を両立させるために、ポール装置での撮影方法を考案しました。

 4mまで伸縮するスタンドをベースにして2mのポールを継ぎ足すことで、最大10mの高さまでならば、安全かつ迅速に複数の場所を撮影することが可能です。建物跡などの比較的小規模の遺構であれば、ベース部分(4m)のみを使用し、効率的に多くの遺構写真を撮影してまわることも可能です。そして、高所に設置したカメラからはWiFi経由で手元のスマートフォンやタブレット端末に画像が転送されるので、ピント合わせなども精密に調整することが可能です。

 実際の画像は、大判パネルや発掘調査報告書での1ページ大の使用にも耐える高画質です。カメラの進歩を感じ取ることができます。

 今後、こういった技術が全国に広まることで、安全かつ迅速に写真を撮影できるようになり、遺跡の記録精度も上がることを期待しています。

 

高所撮影ポール

高所撮影写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3次元レーザースキャナーの導入

 3次元レーザースキャナーは、レーザー光線により対象物の形状を計測する機器です。技術の向上により、近年、測量業、製造業や施設管理など対象物の形状の計測が必要なさまざまな分野で導入が進んでいます。そして、文化財においても利用が進められています。

 従来の方法に比べて計測の精度や速度が飛躍的に改善できる方法です。現在、奈文研では遺跡の記録方法の確立を目的に、研究と実践をおこなっています。

3次元スキャナー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

復興調査での実践

 緊急性を要する復興調査では、技術支援として現地での計測を実施しています。この3次元レーザースキャナーを用いる

ことにより、福島県広野町桜田Ⅳ遺跡では建物の形状を迅速かつ詳細に記録することができました。

 

測量成果

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