奈良文化財研究所に関するさまざまな情報を発信します。

遺跡をはかる

2014年3月

 春遠からじ、といえどまだまだ寒い日がありますね。寒がりの私は外に出るだけでも嫌な季節ではありますが、日々奈文研では発掘調査が進められています。
 発掘調査というと竹べらで慎重に土を掘っていくイメージがありますが、それは作業のほんのひと時でしかありません。多くの時間を要する作業に記録の作業があります。
 
 みつけた柱穴やゴミ穴といった構築物の痕跡や、土器や木簡といったものの位置を記録することは、いかなるものがどこでどのように使われてきたのか、という情報を私達に与えてくれる基礎的なもっとも大切な情報です。この情報を持たない資料は、珍しいものであっても研究の資料としては不十分であり、その価値を減じてしまいます。このため、発掘担当者は慎重に記録をとるのです。
 
 現在私達がよく使用する方法は、基準となる糸を方眼の目のように地面にはり、そこから平面位置を計測した後に、高さを測量機器から読み取る方法です。発掘調査現場をみると、そこかしこの地面に釘が刺されている光景を目にされることがあるかと思いますが、それはこの基準を設定しているのです。そそっかしい私は長丁場の発掘調査では疲れてくると足が上がらなくなり、糸を思わず足で引っ掛けて切ってしまったり、自分が転ぶこともしばしばあります。調査者は定規と大きな画板と鉛筆を手に、地面を凝視しつつ、こつこつと記録をつけていきます。夏の照りつける太陽の元や、冬の凍りついた寒風の中で黙々と記録をおこなうことは大変ですが、調査の成果を多くの方々に伝えていく上で、もっとも重要な作業のひとつと言えるでしょう。
 
 調査された遺跡は長いことそのままにはしておくことができません。ここで残された記録によって遺跡の検討がされることになります。したがって、調査の成否を決めるのは、記録にどれだけの情報を盛り込めるのか、という点にかかっている、とも言えます。調査員は、鉛筆の先に様々な情報や想いを込めて、記録をしていく、というと少し大げさでしょうか。
 
 近年、レーザースキャナーなど新しい計測技術が注目されて来ています。より速く、正確な記録ができることは魅力的です。しかし、技術がどう変わろうと、必要とされる記録の基本には変わりがありません。日々、新しい技術を記録の理念に調和させるか、頭を抱えています。
 

    

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新しい計測の道具―三次元レーザースキャナー―

 

      (埋蔵文化財センター 主任研究員 金田明大)