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リサン、ド=シャルダンのあとを訪ねて

2013年9月  
 
 リサン(Emile Licent 1876-1952)とド=シャルダン(Pierre Teilhard de Chardin 1881-1955)は、ともにイエズス会のフランス人神父。解放前、中国各地で古生物、地質、考古の調査研究に活躍。リサンは中国旧石器の発見者(1920年甘粛省慶陽)。ド=シャルダンは思想家としても有名で、最近でも伝記が出版されています(邦文名『神父と頭蓋骨』,A.D. アクゼル著、早川書店2010)。1923年、2人は寧夏水洞溝、内蒙古シャラオソゴルの2つの旧石器時代の遺跡を発掘しました。最近、二人にゆかりの地によく行き当たります。発掘90周年を記念して、いくつか紹介しましょう。 

①古人類・古生物研究所(Institut de Paleontologie humaine):パリ・サン=マルセル通り沿いにある瀟洒しょうしゃな洋館。二人が発掘した水洞溝、シャラオソゴルの石器は、ここにあります。もともとはド=シャルダンが学んだ国立自然史博物館の所属で、両遺跡の発掘報告書“Le Paleolithique de la Chine”(1928)も出版しました。両遺跡の石器を観察に訪れた私たち科研費調査チームの4名を「石器と同じ極東から来たから」と、著明なアンリ=リュムレイ所長自ら出迎えられ、すべての資料の自由な観察、実測、写真撮影を許可していただきました。 

②水洞溝とシャラオソゴル: 90年前、2人は、フフホト-包頭-銀川-水洞溝-シャラオソゴルの約1000kmをラバのキャラバンで移動し、調査と発掘を進めました。出発地天津に帰るまでは約4か月。現在、両遺跡とも全国重点文物保護単位(日本の特別史跡相当)で、中国科学院古脊椎動物・古人類研究所などが発掘調査と研究を継続的に進めています。なかでも水洞溝は遺跡公園として整備、博物館も設置されています。ところで90周年記念シンポジムで、銀川-シャラオソゴル-内蒙古オルドスの弾丸エクスカーションに参加しました。バスの走破距離約700km、所用時間約14時間でした。 

③河北省陽原県泥河湾村教会:北京の西約200kmの泥河湾盆地にあります。2人は1924~27年にここで布教をしつつ、下部更新統の泥河湾層を調査しました。教会は文革中に壊され、今のは2代目。現在、村には陽原県内最多の100人以上の教徒がいます。泥河湾盆地は、解放後、中国最古の馬圏溝Ⅲ(166万年前)から旧/新石器移行期の于家溝まで、多くの遺跡が発見調査され、中国旧石器研究の聖地と呼ばれています。 

今、なにかと難しい時期ですが、先学の苦闘と情熱を想えば、中国を含めた世界中の仲間とともに、国際共同研究を一歩一歩進める勇気がわいてきます。 


フランス・パリの古生物・古人類研究所

 

中国・河北陽原の泥河湾教会

 
(企画調整部 企画調整室長 加藤 真二)

 

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