年輪年代学では、木材の年輪変動を調べることにより、その木の伐採年代や枯死年代を求めことができます。
この方法の1番の特徴は、木材試料中の各年輪が形成された年を1年単位で決定できる点であり、得られた年代に誤差がないという点では数ある自然科学的年代測定の中でもとりわけ優れた方法です。
欧米ではポピュラーなこの方法も、日本では研究が遅れていました。日本は国土が縦に長く、気候も一様ではありません。また、同じ山でも方角などによって年輪の成長は異なっているはずだ、と思われていました。
そのため、広域で共通するような標準的な年輪の成長パターンを作るのは不可能と考えられていました。
当研究所では、天然木や遺跡から出土した木材を集めたり、古い建造物の修理の時にサンプルを採取したりと、三十余年の歳月をかけて全国各地から木材試料を入手してきました。
それらの年輪幅を0.01mmの精度で計測集計し、ヒノキやスギの暦年標準パターンを作り上げました。
その長さは、約3000年分にもおよびます。
年輪年代学が日本でももっと普及すれば、日本の歴史を研究していく上で世界共通の時間軸を得られるようになるのです。
年輪幅を計測している作業風景
全国各地から集めた木のサンプル