壊すのも 守るのも人間
文化遺産を破壊や消滅の危機にさらすのは、なにも自然災害だけではありません。今回は、人間の手によって壊されようとしている文化遺産を紹介します。
内戦が続くアフガニスタンでは、世界文化遺産・バーミヤンにある東西大仏が、当時のタリバン政権によって2001年に爆破されてしまいました。イスラムの教義にそぐわないというのが、その理由でした。現在ではさらに過激な破壊が、シリアやイラクで大規模におこなわれており、バーミヤンはまさに、その始まりであったと言えます。
しかも、アフガニスタンでは、遺跡破壊ばかりではなく、カブール国立博物館にあった考古遺物の多くが盗まれて海外に売られ、博物館は放火されてしまいました。同じようなことは、03年のイラク戦争でも起こっています。そして、現在でも、シリアでは遺跡の盗掘が後をたちません。
文化遺産を壊すのも人間なら、守るのも人間。奈文研は東京文化財研究所とともに、遺跡の保存修復だけでなく、現地の人々による文化遺産の保護、専門家の育成に協力しています。こうした地道な取り組みが、紛争下の文化遺産の保護と紛争後の復興を可能にすると信じています。
タリバン政権によって爆破されたバーミヤンの西大仏
(奈良文化財研究所研究員 山藤正敏)
(読売新聞2017年3月19日掲載)