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(52)土器に書かれた文字

給食用 裏に役所名

 平城宮跡から出土する土器の中には、墨で文字を書いたものがあります。これを墨書土器と呼んでいます。

 書かれているのは、役所名や官職名、人名、数字、器の名前や内容物などさまざまです。また、同じ字を繰り返し練習したものや、落書き、意味不明の記号などもあります。

 この中で、役所名の書かれた土器は、出土した場所の性格や役所の位置を明らかにする上で、重要な手がかりとなります。

 平城宮に勤務する役人たちの食事は給食制でした。食事は、調理を担当する役所から、各役所に配給され、個人に支給されました。

 こうした給食制度にともない、膨大な数の食器を管理する必要から、食器に役所名や人名などが墨書されたと考えられています。

 しかし、全ての土器に名前が記されているわけではありません。文字の大半は食事を盛った時には見ることのできない、土器の裏に書かれています。

 おそらく、これらの土器は、棚や箱の中に裏返しで収納され、いくつかのまとまりごとに役所の名前や数を書いて管理されていたのでしょう。

 墨書土器の中には、「他人がこの器を取ってはいけない」と書いたものも出土しています。役所から支給された食器の中でも、使っているうちにお気に入りができたのでしょうか?

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役所の名前が記された平城宮跡出土の墨書土器

(奈良文化財研究所研究員 小田裕樹)

(読売新聞2014年4月20日掲載)

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