輸送や保管 特性生かす
墨で文字が書かれた木片を木簡と呼びますが、なぜ紙のほかに木簡が使われたのでしょうか。
木は紙に比べると丈夫で、雨にも強く、何回も削って修正・再利用できるという長所があります。
この特性を生かして、荷物を保管したり輸送する時に、付け札や荷札として木簡が使われました。これらの木簡の多くには、紐(ひも)をかけるための切り込みがあります。
墨で紙に書いた文字は簡単には消せませんが、木簡だと小刀で削って簡単に修正できます。数多く出土する木簡の削屑(けずりくず)はこうしてできたものです。古代の下級役人を「刀筆の吏(り)」というのはこのためです。 しかも、紙が貴重だった古代では、木は簡単に手に入るので、字の練習などにもよく使われました。 一方、木簡は面積が小さいので、書ける文字の量は限られています。字数の多い文書や経典などの書写には不向きで、保管も大変です。そこで、紙の出番です。 このように、日本では紙と木をそれぞれの特徴と目的に合わせて使い分けていました。現在も家の表札や魚屋さんの値札、看板などに「木簡」が使われていますね。
平城宮跡から出土した木簡。切り込みに紐がかけられている
(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー 方国花)
(読売新聞2015年3月15日掲載)