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(79)みんなに知らせる告知札

迷子捜す心情変わらず

 人通りの多い場所で、人捜し、ペット捜しのポスターやチラシを目にしたことがありませんか?

 私たちはこのようにして目撃情報を集めますが、古代はどうだったのでしょうか。

 実は、古代の人も同じようなことをしていました。皆に告げ知らせるという意味の「告知」と書いた告知札が使われていたのです。今まで出土した告知札を見ると、いなくなった馬や牛、迷子の情報をたずねたものがあります。

 左の写真の木簡は、平城京の一条南大路と東三坊大路の交差点近くで出土した9世紀の木簡で、いなくなったオス馬の目撃情報を求める告知札です。この木簡には馬の特徴(片目と額が白い)、見失った時間(今月6日午後3時~5時)と場所(現在の興福寺猿沢池周辺)、告知した人の住所(興福寺中室の南端から数えて三つ目の部屋)が書かれています。今日の人捜し・ペット捜しの掲示内容と同じですね。

 この木簡は長さが1メートル近い長大なもので、下の部分は地面に突き刺すために鋭く尖(とが)っています。最初に「告知」という文字が大きく書かれていますが、これまでに出土した告知札も、皆同じような特徴があります。

 皆の目のつきやすい場所に、目立つものを掲げて、人や動物を見つけようとする人の心情は古代も現代も変わらないですね。

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いなくなったオス馬の目撃情報を求めた告知札の木簡

(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー 方国花)

(読売新聞2014年11月9日掲載)

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