景観研究室Cultural Landscape Section 文化的景観とは

文化的景観とは?

 文化的景観は、平成17年4月1日の文化財保護法改正により新たに設けられた文化財の新類型です。文化財保護法では、以下のように定義されています。

「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの」(文化財保護法第二条第1項第五号)

人の営みが造り出した特徴的な景観地は、例えば棚田や杉林、養殖場など、全国津々浦々にみられます。ここには、ごく近年に形成された場所から、古代を起源とするような長い歴史を持つ場に至るまで、あるいは生業に直結する農山漁村の景観地だけでなく、都市域のそれも含む、多様な対象が想定されます。これらの景観地は、ごく当たり前に存在しているかに見ますが、ある一定の時間をかけて生み出された、人の文化の証にほかなりません。


「景観」の語一般と「文化的景観」の語のちがい

 「景観」ということばは、「都市景観」や「農村景観」など、「眺め」のことを指す、と考えられることが一般的でしょう。 対して、「文化的景観」は、単に目にみえる現象のみではなく、そして人間と風土・環境とを分離してとらえるのでもなく、人間の営みに根ざして形成される、人間の共同体と環境が一体化した領域のまとまりを指しています。私たちが目にする眺めは、その物理的な表象といえるでしょう。 すなわち、「文化的景観」は、本質的に言って、生きた文化財といえます。


世界遺産と日本の文化財保護法における文化的景観のちがい

 世界遺産における文化的景観の考え方は、以下のように定義されています。

・ 自然と人間の共同作品である。
・ 人間を取り巻く自然環境からの制約や恩恵又は継続する内外の社会的、経済的及び文化的な営みの影響の下に、時間を超えて築かれた人間の社会と居住の進化の例証である。
・ 文化的景観は以下に示す3つの主な類型に分類される。

1 「人間の意志により設計され、創出された景観」 審美的な動機によって造営される庭園や公園が含まれ、それらは宗教的その他の記念的建築物やその複合体に(すべてではないが)しばしば附属する

2 「有機的に進化してきた景観」
(ア) 「残存している(あるいは化石化した)景観」 進化の過程が過去のある時期に、突然又は時代を超えて終始している景観
(イ) 「継続している景観」 伝統的な生活様式と密接に結びつき、現代社会において活発な社会的役割を維持し、進化の過程がいまなお進行中の景観

3 「関連する文化的景観」 自然的要素との強力な宗教的、審美的又は文化的な関連によって、その正当性を認められるもの
(「世界遺産条約履行のための作業指針」ユネスコ、1992年より)

 かつて形成されたけれども今は当時の生業・生活が営まれていない景観、現在も引き続き生業・生活が営まれている景観がともに採り上げられているところに、世界遺産における文化的景観の定義の特徴があります。
 世界遺産における文化的景観の定義のうち、主要類型の2及び3が、日本の文化財保護法における文化的景観と特に強い関係を有しています。このうち、2については、かつての生活・生業に基づいて形成されながらもその生活・生業が継続されていない景観、現在も引き続き生業・生活が営まれている景観がともに採り上げられているところに特徴が見られます。
 対して、文化財保護法における文化的景観は、現在も生きている景観地を対象としています。生業・生活が断絶した景観地は、日本の文化財保護制度のうち、有形文化財や記念物として保護することが可能な場合が多くあります。よって、生業・生活の継続性に力点を置くところに、文化財保護法における文化的景観の特質が指摘されます。 また、農林水産業に関連して形成された文化的景観に加え、都市域における文化的景観も保護対象に含まれるところにも、文化財保護法における文化的景観の特徴を見ることができます。


文化的景観の保護制度

 文化的景観に関する国による保護制度として、文化財保護法に規定される「重要文化的景観」の選定制度があります。
 国は、景観法に定める景観計画区域又は景観地区にある文化的景観のうち、文化財として特に重要な価値を有するものを、都道府県又は市町村の申出に基づき、「重要文化的景観」として選定することができます。
 重要文化的景観に選定されると、現状を変更する、あるいはその保存に影響を及ぼす行為をしようとする場合、文化庁長官に届け出る必要があり、文化庁長官より必要な指導、助言、勧告がなされます。ただし、通常の生産活動に係る行為や非常災害に係る応急措置等においては、この限りではありません。
 また,文化的景観の保存調査、保存計画の策定、文化的景観の整備活用、普及・啓発事業に対しては、国からその経費の一部が補助されます。
 奈良文化財研究所では、文化的景観の保存調査、保存計画の策定のための調査を、都道府県・市町村からの委託等で実施しており、かつ、整備活用に資する調査研究を都道府県・市町村との協力の下、実施しています。
文化的景観保護制度パンフレット『魅力ある風景を未来へ 文化的景観の保護制度』外部ページへ







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