景観研究室 Cultural Landscape Section 京都岡崎の文化的景観

京都岡崎の文化的景観

平成21年度より京都岡崎地区の文化的景観の重要文化的景観への選定申出のための調査および保存計画策定を目的に調査研究を実施しています。

現地調査

 現地調査では、岡崎の現況景観の構造的把握を目的として、土地利用調査、景観構成要素分布調査、生業分布調査を岡崎地区全域を対象に悉皆的に行いました。その他、自然調査として岡崎公園の街路樹調査、疏水苑池式庭園における生態系調査、生活・生業に関わる資史料調査を実施しています。なお、本調査の成果は、京都岡崎の文化的景観調査検討委員会において調査成果の中間報告を行っています。

<調査項目>
A 景観構造の把握
① 既往研究・資史料の整理(自然、歴史、都市空間・景観、生活・生業関連)
② 土地利用調査:都市空間構造・土地利用の現況調査、史的変遷の分析
③ 景観調査:景観構成要素分布調査、景観単位区分(景観のゾーニング)、景観認知調査

B 景観を構成する諸要素の詳細調査
①自然調査:街路樹植生調査、疎水園地群生態系調査、水系調査
②生活・生業調査:生業分布調査、聞き取り調査
③景観調査:重要な景観構成要素候補リスト化・実測調査

 本調査の成果として、①琵琶湖疏水・白川の水利用によって形成された都市・産業景観の特質を明らかにしたこと、②大規模土地利用を可能とする都市構造の変遷とその特質を明らかにしたこと、③岡崎の文化的景観を構成する諸要素(建築物、工作物、自然物、土地利用、産業等)の特質とその有機的関連性を明らかにしたこと、が挙げられます。

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岡崎公園南側の琵琶湖疏水 鴨川と東山に挟まれた岡崎は、白川がつくる扇状地地形を基盤に、白川と琵琶湖疏水の水利用によって形成された都市・産業景観です。 並河靖之七宝記念館 明治・大正時代に活躍した七宝家・並河靖之の旧邸。庭園は植治の作庭で、七宝焼の研磨と共に苑池式庭園に琵琶湖疏水の水を利用しています。

成果

■パネル展「京都岡崎の文化的景観」の開催
「京都岡崎の文化的景観調査検討事業」の調査成果の公開を目的として、平成22年度から実施している京都岡崎の文化的景観の調査成果について、京都市文化財保護課主催、奈良文化財研究所景観研究室協力のパネル展「京都岡崎の文化的景観」を開催しました。
<会期>平成24年3月13 日(火)〜3月23日(木)
<会場>細見美術館(左京区岡崎最勝寺町6-3)3階無料展示スペース
<展示内容>
A 京都岡崎の文化的景観の全体解説
①「はじめに」文化的景観調査の概要
②「文化的景観とは?」文化的景観の概念および文化的景観保護制度の説明
③「都市の中の自然」岡崎の自然環境(地形・地質・水系・植生)
④「疏水都市の誕生」平安期から現在迄の岡崎の都市構造の変遷
⑤「水辺の文化と産業」岡崎の水利用と生活生業(舟運、灌漑用水、庭園利用、水車動力、水力発電、親水利用)
⑥「京都岡崎の文化的景観」解説イラスト
B テーマ別展示
①「蔬菜農業と食文化」聖護院大根など蔬菜作物、漬け物など食文化
②「夷川ダムと水車利用」精米・製粉、伸銅、舟運など疏水関連産業
③「疏水庭園と生態系」水槽での魚類生態展示
④「六勝寺と現在の岡崎」六勝寺出土瓦展示
⑤「広場としての岡崎公園」岡崎公園の変遷図 、岡崎公園の昭和30年代動画

»京都岡崎の文化的景観パネル展チラシ (2.5MB)


■「都市を文化的景観として見ること-佐渡相川、京都岡崎の調査から-」『奈良文化財研究所紀要2011』

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