景観研究室Cultural Landscape Section 佐渡相川の文化的景観

佐渡相川の文化的景観

 「佐渡相川の文化的景観」の景観変遷・景観構造調査に関する調査研究として、特に景観構造の特徴把握と価値評価を目的として調査を実施しています。

調査研究

 佐渡相川の文化的景観に関する価値調査では、都市相川を成り立たせているシステムを全体として明らかにするために、植生、土地利用、都市構造、生活・生業といった各要素相互の関係の構造化を意識した調査を進めています。また、景観の基本構造分析に必要な基礎情報と、景観を構成する 各要素の個別の特性の把握を目的として、景観構成要素(建築物、工作物、農地、山林、街路、水系等)の悉皆調査、石造物の悉皆調査など、諸要素の個別調査も実施しています。


 なお、本調査は佐渡市からの受託調査事業として実施しており、東京大学工学系研究科伊藤研究室(都市史)、京都府立大学大場研究室(建築史)とも連携しながら調査を進めています。

<調査項目>
A 景観の基本構造の把握
① 既往諸研究の読解、整理と古写真、絵図史料、記録・史料類の収集
② 現地踏査による地形、植生、土地利用、都市構造の把握
③ 郷土史研究者・住民からのヒアリング
B 景観を構成する諸要素の個別調査
① 自然・地理的調査:植生調査、水系調査、地形実測
② 生活・生業調査:聞き取り調査、史料調査
③ 土地利用・都市史調査の補足:土地利用、都市構造の現況と史的変遷の調査
⑤ 景観構成要素個別調査:一覧表化、未実測物件の補足実測調査


 現在までの調査成果として、①相川の文化的景観をとらえるうえでの視点を示せたこと、②文化的景観を構成する不動産の分布と特色を見出せたこと、③相川全体の石量と石利用、また石切り場から都市への石の分配システムの概略をつかめたこと、④相川地区を取り巻く河岸段丘上において、相川の影響を受けながら各 時代に成立した水田が混在することが明らかになったこと、⑤相川屋敷帳を用いた作業から正確度の高い都市復元ができ、それ自体が相川の文化的景観における重要な価値評価になること、が挙げられます。
 本調査の成果は、「佐渡相川の文化的景観」の価値評価のための基礎資料となるとともに、今後の整備・活用計画策定のための視点も提示するものとなることが期待されます。  

 


建築関連の石材利用

海岸部の石切り場から切り出された石材は都市に供給され、建築の基礎石のほかにも、石垣、水路などに豊富に利用されています。


河岸段丘上の水田
古い水利の仕組み(主に個人での用排水システム)が残る旧源滴エリアは近世に開発された水田と考えられます。 

中間報告会の様子

保存計画策定

 文化的景観としての価値に関する調査研究で明らかになった成果・価値をもとに、平成24年度後半からは保存計画策定に向けた取組を、調査研究事業の委託元である佐渡市世界遺産推進課、また新潟県世界遺産登録推進室とも協議を行いながら進めています。

①保存計画策定
 調査で浮かび上がった佐渡相川の文化的景観としての価値をどのように保存していくのか、また選定申出範囲や重要な構成要素をどのように設定していくかなどということについて、地域の実情や将来像も検討しながら策定を行なっています。また、文化的景観選定申出のための景観計画改訂のための景観形成基準案などに関する協議を実施しています。
 あわせて、保存計画策定のための基礎的な調査として、「世界遺産と相川の景観に関するアンケート調査」(2013年5月~6月実施)などを実施し、住民のみなさんの意識や景観認知などについて分析を進めています。

②普及啓発活動
 佐渡相川の文化的景観の価値や保存の意義などを住民の皆さんなどと共有していくため、以下のような普及啓発活動を佐渡市世界遺産推進課などとともに実施しています。
 1)世界遺産座談会
 住民のみなさんと、世界遺産登録や文化的景観保護のための意見交換、また規制やメリットの在り方などについて定期的に議論を行う場を設けています。
 2)「あいかわらばん」の発行
 世界遺産座談会の内容や世界遺産や文化的景観に関する動向の共有を目指して、ミニコミ誌「あいかわらばん」(佐渡市世界遺産推進課・新潟県世界遺産登録推進室・奈良文化財研究所景観研究室編集)を定期的に発行しています。これらは相川地区に全戸配布されるほか、島内の施設、ウェブサイト等でも配布・公開されています。
     あいかわらばん

 佐渡相川の文化的景観に関する調査研究は、世界遺産登録への取組などと密接に関わるため、本研究室の実施する“文化的景観保護に関する国際的研究”における調査研究成果も活かしながら、検討を進めています。
 

 


世界遺産座談会の様子

■奈良文化財研究所(2011)『奈良文化財研究所紀要2011』「都市を文化的景観として見ること-佐渡相川、京都岡崎の調査から-」


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