奈良文化財研究所は昭和27年の設立当初から、南都諸大寺及び近畿周辺の古社寺における文化財の調査・研究を進めてきました。平成13年度に当研究所が独立行政法人に移行するにあたり、設立当初からの研究室である建造物研究室・歴史研究室に、さらに遺跡研究室を新設して、3室からなる文化遺産研究部が発足しました。その後、文化財の新分野として文化的景観が認められたことに伴い、平成18年度には景観研究室を新設し、文化遺産部は歴史研究室・建造物研究室・景観研究室・遺跡整備研究室の4室体制となりました。さらに令和6年度には、それまで都城発掘調査部に所属していた史料研究室・遺構研究室の業務も加わり、歴史史料研究室・建造物遺構研究室・景観研究室・遺跡研究室の4室となっています。
現在、歴史史料研究室は書跡・典籍・古文書・歴史資料や出土文字資料、建造物遺構研究室は歴史的建造物・伝統的建造物群や発掘遺構、景観研究室は文化的景観、遺跡研究室は遺跡マネジメント・庭園について、専門的かつ総合的な調査研究を行っています。フィールドは奈良・近畿を中心に日本全国、一部は海外にまで及んでいます。それらの成果は文化財の指定・登録・選定やその後の保存と活用に関する方策など、国の文化財保護行政に貢献しています。また地方公共団体の文化財行政に対しても、協力・助言等で貢献しています。
文化遺産部が扱う分野は、文化財保護法による文化財の分類では、美術工芸品(書跡・典籍・歴史資料)や建造物といった有形文化財、伝統的建造物群、文化的景観、記念物(名勝・史跡)に対応しており、とても広い分野にまたがります。よって研究者が専門とする分野も多岐にわたります。しかし、「文化遺産」――人間の歴史的営為の中で築き上げられ、将来に継承していくべき文化的資産――の基礎的な調査研究を行い、その保護と活用に役立てるために、部員全員が協力して仕事に取り組んでいます。