0 今回の発表の要旨
年輪年代測定の根拠となる対象物の年輪幅時系列、年輪幅計測用画像等の年輪年代データについて、奈良文化財研究所リポジトリ上でデジタル公開し、関連分野の研究者や地公体文化財担当者等の幅広い利活用を目指す。
年輪年代学は、年輪の年代を1年精度で誤差なく明らかにすることができるものであるため、木造文化財の製作年代の考究等に有用である。そこで、年輪幅時系列の数値データだけではなく、その計測の根拠となる調査試料の高解像度の画像と、調査試料のどの部分を計測したかを示す低解像度の画像をあわせて公開することとした。
年輪年代が導出された試料の年輪幅時系列、年輪幅計測用画像等の年輪年代データをデジタル公開することにより、年輪年代測定の根拠を示すとともに、他者による追検証を可能なものとする上で非常に意義が高いと考えられる。

1 現在までの経緯と状況
- 年輪年代学は、年輪の年代を1年精度で誤差なく明らかにすることができるものであるため、木造文化財の製作年代の考究等に有用であり、これまで考古遺物、歴史的建造物、木彫像等の様々な木造文化財について年代測定がなされてきた。
- また年輪は、その樹木が生育していた時代・地域の気候や生態情報を記録するものであり、古気候学や古生態学的な潜在性を有している。
- しかし、その根拠となる年輪年代データについては、研究上の事情やデータの特性(物理的な木材の輪切りである、といった形状の事情等)から、これまで日本では積極的な公開がなされてきていない。
2 近年の研究状況
- 従来、実体顕微鏡を用いて行われていた年輪年代学に関するデータ取得が、デジタル技術の発展に伴い、デジタルカメラやスキャナー等のデジタル機器を用いたデータ取得を主とするように変化してきている。
- また、近年の研究を取り巻く環境も、公的資金による研究データの管理・利活用について、機関リポジトリへの研究データの収載を進めることが求められており(*1)、研究データのオープンアクセス化は今後の必須課題となっている(*2)。
3 今回の研究基礎データ公開の内容
- 年輪年代測定の根拠となる対象物の年輪幅時系列、年輪幅計測用画像等の年輪年代データについて、奈良文化財研究所リポジトリ上でデジタル公開し、関連分野の研究者や地公体文化財担当者等の幅広い利活用を目指す。
- 今回、公開するのは、2024年3月に出版された奈良文化財研究所学報第103冊に掲載された年輪年代に関するデータセットで、対象遺物18点の年輪幅時系列(西暦342~775年)と、年輪幅計測用および年輪幅計測線を示すデジタル画像147点。
- 年輪幅時系列の数値データだけではなく、その計測の根拠となる調査試料の高解像度の画像と、調査試料のどの部分を計測したかを示す低解像度の画像をあわせて公開することとした。これらをあわせた形で年輪年代データを公開する取り組みは、世界的に見ても先駆的といえる。
4 公開の意義
- 年輪年代が導出された試料の年輪幅時系列、年輪幅計測用画像等の年輪年代データをデジタル公開することにより、年輪年代測定の根拠を示すとともに、他者による追検証を可能なものとする上で非常に意義が高い。
5 今後の展望
報道発表資料
プレスリリース資料