前回に引き続き飛鳥寺西門前から出土した土管のお話です。
この土管は、飛鳥寺の西を暗渠(地下に設けられた水路)として南北方向に通っています。奈良文化財研究所の調査で約40本、明日香村教育委員会の調査で3本が取り上げられました。おおよそ全長53cm前後、外径22cm前後、重さ23kg前後です。どれも作り方が似ていますが、ソケット状の差し込み部分や差し込み口の長さがそれぞれ異なっています。この違いなどをもとに、小野木ルリコ氏は大きく3種類に分類しました。明日香村教育委員会の調査ではこの3種類の土管が1本ずつ出土しています。
土管には、ソケット部分に近い外径表面に朱線が1本、縦に引かれています(図1)。また水が流れていたと思われる内面の半周には、水の汚れが付着しています(図2)。その位置関係を観察すると、朱線が上(地面と反対側)に来るように土管が設置されていたようです。朱線以外にも、線刻のある土管もあります(図3)。
細かい観察を通して、それぞれ土管の個性や使われていたときの様子が見えてきます。みなさんも会場で土管を注意深く観察してみてください。
【参考文献】
花谷浩1997「飛鳥寺の調査―1996-1・3次、第84次 1西門地区の調査(1996-1次)」『奈良文化財研究所年報1997-II』
小野木ルリコ2006「飛鳥寺西門出土土管の検討 : 製作技法にみる飛鳥寺造瓦工人との関連を中心に」『史泉』第103巻 関西大学史学・地理学会
明日香村教育委員会文化財課 編2020『飛鳥寺西方遺跡発掘調査報告書』(明日香村文化財調査報告書第14集)
◆飛鳥の考古学2020
2021年1月22日(金)~3月14日(日) ※月曜休館
展覧会の詳細はこちら
図1 土管に残る朱線
図2 水の汚れと朱線の関係
図3 線刻のある土管
2021年03月08日(月曜日)