明日香村栢森(かやのもり)の綱掛神事は毎年1月11日におこなわれます。地区の代表を含めた6名程度の男性が制作から綱掛けまでを手がけます(写真1)。
女綱(めづな)へのお供えは稲渕(いなぶち)とは異なり、12個のみかんが縦横に串刺しにされたものです(写真2)。綱自体も太く力強い稲渕と比べると細く優美な印象を与えます。稲藁をもたらす両地区の耕作面積の広狭が関係しているのかもしれません。綱を制作する作業場は集落内にあります。そのため、編んだ綱はお供えと一緒に、地区内の龍福寺住職の先導で集落を出て、稲渕との境界近くまで丸太に巻いて担いでいくことになります(写真3)。また綱の全長の測り方も特徴的で、作業場から川上方面の道沿いに綱を伸ばし、決まった場所まで届くかどうかを目安にします。
綱を掛ける場所に運ばれた女綱は、福石という石の前で住職によって祈祷されたのち、その前方の川に掛け渡されます(写真4)。女綱が両岸から引っ張られるごとに、ゆさゆさと揺れながら掛け上げられていく様がとても印象的です。栢森の綱掛神事が仏式であるのに対して、稲渕では神式でおこなわれるという違いがあります。
大勢が参加し賑やかな稲渕の綱掛神事とは対照的に、栢森の綱掛神事は地域の行事のおごそかさをより味わうことができます。綱掛神事には、稲渕と栢森のくらしの雰囲気があらわれているのかもしれません。
第14回写真コンテストのテーマは「飛鳥のくらし」です。綱掛神事のような行事のほか、風景や物、作業など、「飛鳥のくらし」にまつわる写真を広く募集します。6月30日(金)まで、みなさまのご応募をお待ちしております。応募方法などの詳細はこちら
写真1 第11回写真コンテスト「飛鳥の祭」正三位 飛鳥祭画卿「女綱をなう」竹本晴行様
写真2 制作された女綱とお供え
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写真3 作業場から運び出される女綱
写真4 福石と掛け渡された女綱
2023年05月02日(火曜日)