飛鳥を歩くと、四季折々のくらしの風景に出会うことができます。田植えの頃は青空を反射した早苗田がすがすがしく、晩秋には棚田に立ちのぼる野焼きの煙が郷愁を誘います。こうした風景は、ときに地下の遺跡や万葉の時代への想像をかき立てます。飛鳥の情景は、豊かな自然、悠久の歴史、そして人々のくらしが三位一体となって育まれてきたのです。第14回写真コンテストでは、「飛鳥のくらし」をテーマとします。農作業の風景はもちろん、日常の何気ない光景など、多様な飛鳥のくらしを写し取った作品を広く募集・展示します。人々の息吹がいきいきと感じられるような作品の撮影と鑑賞を通して、飛鳥のくらしの魅力にふれてみてはいかがでしょうか。
展示期間 | 2023 年7 月14 日(金)〜 9 月18 日(月祝) (※月曜休館 ただし8月14日(月)は開館、7月17日(月)・9月18日(月)は開館し翌日休館) |
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来館者投票期間 | 2023 年7 月14 日(金)〜 8 月20 日(日) (※月曜休館 ただし8月14日(月)は開館、7月17日(月)は開館し翌日休館) |
飛鳥で営まれるくらしに関係する風景や物、作業、行事などを撮影した作品を募集します。撮影時期は問いません。
「飛鳥のくらし」をテーマにした今回のコンテストでは、人々のくらしや地域に根付く習俗、まつりなど様々な題材を切り取った作品95点のご応募をいただきました。出品いただいた皆様ありがとうございます。
多種多様なくらしの場面をそれぞれの感性で切り取った作品はいずれも魅力的で、技術面だけでは審査が難しいコンテストとなりました。審査のポイントは写真としての構成、構図、主題の明確さと飛鳥の景観の中に溶け込んだ「くらし」がどのように表現されているのかです。
入賞作品はもちろん、選に漏れた作品も非常に主題は明確なものが多く、その主題を引き出すために工夫された作品が多かったことが印象的です。
構図や構成では作品を鑑賞される方が主題に視線を移動しやすい流れを意識することが大事です。皆さんも撮影の際にファインダーやディスプレイをよく確認し、主題への流れ・ストーリーが写真の中に組み立てられているか、カメラは水平になっているかを観察してみるとさらに良い作品になるでしょう。
コロナ禍も一定の収束をむかえ、外出しての撮影機会が増えてきます。ぜひ写真撮影を楽しんでいただきたいと思います。
次回のテーマは、「飛鳥の音」です。ご応募をお待ちしております。
受賞コメント
正一位飛鳥生活太政大臣に選出頂き誠に有難うございます。今年の1月11日に栢森の人々が綱掛神事の女綱と勧請縄を作っておられるところを撮影させて頂きました。栢森の人々にとって特別で大切な一日でありながらも、いつもと変わらぬゆっくりとした時間が流れていきます。そこに栢森の人々の日々の暮らしの息吹を感じ、そして何より栢森の人々同士の強い絆を感じることが出来ました。どうも有難うございました。
講評
栢森の綱掛神事で掛け替える、女綱をなう光景を切り取った作品です。女綱には豊作や子孫繫栄、疫病除けの意味があります。構図、構成ともに非常にムダが無く視線の流れや光の使い方が素晴らしい作品に仕上がっています。綱をなう人々の動きや光と影の方向をよく観察されて撮影位置を選択された努力が感じられました。
7月14 日(金)〜 8月20 日(日)の来館者投票により1位に選ばれた作品です。
講評
細川の棚田の夕焼けをとらえた作品です。投票していただいた方からは、「明暗のコントラスト、夕焼けの赤、棚田と山のバランス構図など家に飾りたいと思いました」、「すべてが好きでこの写真の前でしばらく足が止まりました」、「構図が良い、色が映え!」など、夕焼けが美しいという感想が多くみられました。
受賞コメント
この度は、正二位をいただき誠にありがとうございました。飛鳥の里は悠久の歴史が紡がれています。約千年前の営みから古都を守り続けるなかで、田園と風情の情感に魅力を感じています。その様な村を歩いていると、村内の生活感と文化・伝承・歴史を垣間見る楽しみがあり、記録に残さずにはおられません。新しい予感を期待して足繁く通う日々が続きます。
講評
田園地帯が広がる中に佇む弥勒石。地元では「弥勒さん」と呼ばれ、足腰の健康にご利益があると慕われています。その祠に花を供えてお参りする日常の風景を背景の桜や坂道の収束する場所に配置して切り取った作品です。決してカラフルではない日常風景が背景の色彩とのコントラストで引き立っています。
受賞コメント
この度は「正二位生活右大臣」位を戴き心から感謝致します。
写真は数年前栢森を訪れた時のこと、大量の白煙を噴く民家を発見。かけつけこの家の工場で、桧の木肌を精製するご主人に会うことが出来ました。
ご主人は商品の多様化、販路に腐心されており常に考えて前進する生き甲斐のある素敵な「くらし」をされている印象を受けました。飛鳥人が古代皇室を支えた誇りと粘りが、今后も末長く発展に結びつく事が予想出来ました。
講評
奥飛鳥栢森にて林業を営む姿を縦写真の構図で切り取った作品です。皮付きの自然木を丸太に加工している場面でしょうか。捨てられたみかんの皮に作業時間の経過が感じ取れます。山のくらしの日常に焦点を当てて三角形の構図として上手く収められている点が評価されました。
受賞コメント
毎日決まった時間に登校する、近所の小学生達です。梅雨の時期にいつものように登校していました。小雨が降るなか、傘をさし楽しそうに話しながら登校する姿が何とも言えない微笑ましい風景でした!
講評
梅雨時の雨の中、傘をさして登校する小学生の日常風景を切り取った作品です。田植えの終わった田んぼ、手前のアジサイ、雨降りの登校と四季のある暮らしを見事に表現されています。ちなみに、田んぼの奥には飛鳥宮跡、飛鳥京跡苑池が広がります。遺跡の中を通学する、飛鳥らしい風景です。
受賞コメント
この度の受賞、大変うれしく思っております。飛鳥川と飛び石は古くは歌にも詠まれ、彼岸花との撮影も良く知られているスポットです。何気なく立ち寄った時に、田植え後の育苗箱の洗浄作業に出くわし、飛び石を、いい腰掛にして、静かで程よい流れの元での作業が、田植え作業の疲れも取り除かれた様な自然体での作業に感動させられ切り取った一枚です。
講評
飛鳥川の中で、黙々と稲の育苗箱を洗う姿がくらしの1ページとして表現されています。奥飛鳥では飛鳥川の流れを利用した洗い場がいくつかありますが、ここでは飛び石も同じように使われています。飛び石の配置によって主題へと視線が収束し、背景の樹木の彩りとともに上手くまとまっています。
受賞コメント
この度はこのような賞をいただきありがとうございます。遠い昔から育んできた飛鳥の棚田の原風景を撮りたいと飛鳥にきました。貴重な風景に出会うことができたことに感謝します。
講評
飛鳥の山里に広がる棚田の風景を夕景のタイミングで造形的に切り取った作品です。印象的な淡い色彩の中で阪田の棚田が作り出す造形美を比較的シンメトリーに配置し、水路を介さずに上下の田をつなぐ田越しの水口も盛り込んで、飛鳥の棚田を上手く表現しています。
講評
まだ明け切らぬ朝の水田を見回る農家のくらし。水田の造形が朝焼け前のトーンに浮かび上がる情景を描いた作品です。水田の収束する視線の先に見回りの人物が配置され、より主題が明確になっています。
講評
飛鳥では、1月中旬にトンドが決められた場所に組まれ、焚き上げられます。立部のトンドは支柱に竜が巻き付くような形が特徴的です。焚き上げられる前のトンドの姿が霧のトーンに浮かび上がる構図となっており、高く掲げられた竜の様子がよくわかります。
講評
飛鳥の地を物語るかのような二上山と畝傍山が重なる遠景と、農作業のくらしを上手く表現した作品です。コンバインと手刈りの共同作業を斜めに配置し、主題に向けてスムーズに視線が移動する縦写真の構図が見事です。
講評
飛鳥の夕景のなか、田植え後に手で苗を補植する人物がシルエットとして浮かび上がる見事な作品です。遠景の二上山や畝傍山から連なるトーンが手前の水田に映る夕焼けのかがやきまでいくつかの段階で表現されており、光の使い方が絶妙な作品だと感じました。
受賞コメント
この度は選考下さり、ありがとうございました。初めての受賞で大変誇らしいです。田園風景とそこでの農作業は私にとって原風景と言える光景です。遠く、故郷の島根県と飛鳥にはどこか重なる部分を感じます。撮影に際し、田植え時期の違いには驚きました。地域の方々から話を伺う事が出来ました。お忙しい中お時間を頂き感謝に堪えません。ここに改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
講評
田植え作業が終わり、一日の終わりである夕景のなか疲れを癒やすかのように水田から引き上げられた田植え機。まるで物語のようなストーリー性を夕焼けに浮かび上がらせる作品となっています。夕焼けと緑色のトーンが単純化され、より主題が明確なものとなっています。
応募締切 | 2023 年6 月30 日(金)必着 |
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展示期間 | 2023 年7 月14 日(金)〜 9 月18 日(月祝) (※月曜休館 ただし8月14日(月)は開館、7月17日(月)・9月18日(月)は開館し翌日休館) |
来館者投票期間 | 2023 年7 月14 日(金)〜 8 月20 日(日) (※月曜休館 ただし8月14日(月)は開館、7月17日(月)は開館し翌日休館) |
応募作品審査 | 奈良文化財研究所 写真室、景観研究室、飛鳥資料館 学芸室 |
岡村印刷工業株式会社、コクヨマーケティング株式会社、NPO法人明日香の未来を創る会 明日香村稲渕棚田保全会 、両槻会
文化庁、国営飛鳥歴史公園事務所、明日香村、朝日新聞社奈良総局、 読売新聞社、毎日新聞奈良支局、奈良新聞社、NHK 奈良放送局、 近畿日本鉄道株式会社
正一位・・・1名 岡村印刷工業株式会社 ミストグラフⓇ による受賞作品のプリント・額装(協賛者提供)
従一位・・・1名 飛鳥資料館オリジナルカメラストラップ(協賛者提供)
※来館者直接投票最多得票者
正二位・・・2名 飛鳥資料館オリジナルグッズ
正三位・・・3名 堀内カラーファインアート・プリントクーポン
正四位・・・4名 コクヨプロフェッショナル写真用紙(協賛者提供)
正五位(若草賞)・・・1名 コクヨプロフェッショナル写真用紙(協賛者提供)
※10代・20代対象の若手部門
飛鳥資料館官位・官位授与証・写真額装・展示図録一年分・明日香村の新米
応募作品を飛鳥資料館で展示!
(基本的に全作品を展示する予定ですが、応募多数の場合は、全作品を展示できない場合もありますので、ご了承ください。)
飛鳥資料館HP、Facebook、Twitterで入賞作品を発表します。
入賞者の方へは、飛鳥資料館から封書にてご連絡いたします。
写真コンテストに関連して、よくお問い合わせのある質問をまとめましたので、応募の際に参考にしてください。
A. 1点です。
A. このコンテストでは、飛鳥地域として、明日香村を中心に橿原市・桜井市・高取町などの一部も含めた範囲を想定しております。大和三山や奥飛鳥、藤原京も対象にはいります。
A. 過去に撮影された写真でもかまいませんが、ぜひこの機会に、飛鳥を巡って、新しい視点で飛鳥の景色を見直してみてはいかがでしょうか?四季折々、朝昼晩、お好きな時間帯に撮影してください。
A. 審査会では、「飛鳥の歴史と文化の表現」「飛鳥の新たな魅力の発見」を重視しています。
著名な観光地や文化財を撮影した写真ならば、どこかで見たような写真ではなく、光の捉え方や撮影視点を工夫してみてはいかがでしょうか?
観光案内にのらない場所でも、飛鳥地域の人々の営みや歴史への思いが感じられる風景を撮影した写真は、当コンテストの意図に沿うものとして高く評価します。
また、従一位は、来館者投票で選ばれます。来館者の心をつかむインパクトのある作品が好まれるようです。
住所 | 〒634-0102 奈良県高市郡明日香村奥山601 |
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電話番号 | (0744)54-3561 |
FAX番号 | (0744)54-3563 |
info.shiryokan_nabunken☆nich.go.jp (☆を@に変更してください) |