2020年の新たな奈文研オリジナルグッズとして製作したエコバッグ「平城宮の箸と匙」には、平城宮の発掘調査で見つかった箸と匙を掲載しました。ここでは、エコバッグに掲載した箸と匙や、エコバッグ製作秘話をご紹介したいと思います。
エコバッグに掲載した箸と匙は、1963年におこなわれた平城宮の発掘調査で出土したものです。箸と匙が見つかったのは内裏北外郭官衙のSK820というごみ捨て穴と考えられる土坑で、ここは現在までに平城宮内で多く箸が出土した場所です。SK820からは聖武天皇が紫香楽宮から5年ぶりに平城宮に戻った後の天平17年(745)から天平19年(747)の年代が記された木簡が多く出土しています。このことから、同じSK820から出土した箸や匙などの木器も同年代のものであると推測できます。
日本での箸の歴史は、仏教とともに仏具として伝来したとされ、出土品としては7世紀後半頃にさかのぼります。飛鳥・藤原地域でおこなわれた発掘調査では、箸がいくつか出土していますが、平城宮の発掘調査では箸が大量に出土しています。そのため、奈良時代の平城宮では多くの箸が使われていたことがいえるでしょう。
また、平城宮から出土する箸の多くはヒノキやスギなどの木の棒を細く削り出したものです。現代の箸のように漆塗りの模様があったり、名前が書いてあったりするわけではないので、箸が出土した際に、厳密にはどれが同じペアだったかはわかりません。しかし、形状や長さなどから木の棒が1本だけ出土した際にも箸と認定することができます。エコバッグには、そのような研究についても知ってもらえるように、あえて1本だけの箸も載せています。
エコバッグに掲載の箸以外にも、平城宮からはその他の食膳具も出土しています。これらは、奈良文化財研究所 平城宮跡資料館で、当時の食生活の復元とあわせて展示しています。もっと詳しく知りたい方は、こちらの展示もおすすめです。
エコバッグの製作にあたり、おもに木製品や金属製品などの研究をおこなっている都城発掘調査部 考古第一研究室の研究員に協力をしてもらいました。
六一書房オンラインショップ(エコバッグはこちらからも購入できます)
2020年07月31日(金曜日)