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【飛鳥のくらし】田んぼの畦の名脇役

徐々に稲穂が頭を垂れていく初秋の頃、田んぼの畦ではヒガンバナが一斉に咲き誇ります(写真1)。実はこのヒガンバナ、初めから自生しているわけではありません。種子をつけることができず、生食では毒性があり動物に運んでもらうこともできないため、人間が球根を植えることをきっかけに繁殖してきたのです。もとは動物除けや非常食として畦に植えられたと言われています。

 

ヒガンバナ以外にも、田んぼの畦には意図的に植えられる植物があります。その一つが「畦豆(あぜまめ)」とも呼ばれる大豆です(写真2)。畦豆は田植後に畦に種がまかれ、稲刈りと同時に収穫されます。かつて畦豆は日本各地で栽培されていました。その多くは耕地整理や除草剤の使用、または獣による食害姿を消しましたが、明日香村ではまだまだ栽培されています。

 

最後に紹介する畦の上の植物はやコナラの木です(写真3)。明日香村の稲渕棚田では32本が確認されています。この木は稲作と密接な関わりがあるのです。稲刈りの後、機械を用いずに天日で米を乾燥する場合、杭などに括り付けて稲藁を干します。その際、木や竹で組んだ稲架(はさ)藁を掛ける方法と、垂直に立つ杭や木の幹に藁を括り付ける方法があります(写真4)。後者は干すスペースを取らないため、稲刈り後に同じ田んぼで小麦などの裏作をするのに適しています。さらに畦に植えた木を使うことで、限られた農地を最大限裏作に利用することができました。裏作があまりおこなわれなくなった今日、これらの利用は減りましたがかつての創意工夫を今に伝えてくれます。

 

こうした畦の上の名脇役は、飛鳥のなかでも棚田が広がる山間部でよく見られます。山間部では平地よりも農地全体に占める畦の割合が高くなるため、畦がより多様に使われてきたのです。畦では山菜や草花など、ここで紹介したもの以外にもさまざまな植物がくらしを彩ります。

 

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飛鳥川の左側にこどもが遊んでいて、右側に彼岸花が咲いている写真

第1回写真コンテスト「知られざる飛鳥の情景」
従三位景観写真卿「飛鳥川、石走の秋」熱川英明様

稲刈りも近い田んぼの畦にずらっと育っている畦豆

畦に列状に植えられた畦豆

棚田の中ぽつぽつと立つ木々の画像

稲渕棚田の畦に立つ木々

大きな松ぼっくりのようなかたちの3つのすすきの画像

杭に藁を括り付けた「ススキ」

2023年06月08日(木曜日)

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