飛鳥資料館では、冬期企画展「飛鳥の考古学 2011」に合わせまして、写真コンテスト「知られざる飛鳥の情景」を開催いたします。飛鳥の地には多くの遺跡や美しい風景がありますが、これらは季節や時間、天候でも様々な表情を見せます。また、2011年に重要文化的景観に選定された奥明日香の棚田などは、多くの人々が作り上げてきた風景です。その人々や豊穣の御神事なども飛鳥を織り成す風景といえ、多くの人には知られざる一瞬はきっと魅力的な情景でしょう。
題材
「飛鳥の考古学2011」に関連する遺跡(甘樫丘、飛鳥京跡、水落遺跡、檜隈寺、坂田寺、川原寺、牽牛子塚古墳、越塚御門古墳、植山古墳、奥明日香の棚田や風景、文化的景観など)、飛鳥地域の遺跡、寺院、文化財、美しい風景など
後援/協力
朝日新聞、NHK奈良放送局、岡村印刷工業、NPO明日香の未来を創る会
講評
飛鳥資料館としては初めての写真コンテストでしたが、皆様のご応募により、心配していました応募点数も総計160 点ほどになり、第1回目の写真コンテストとしてはまずまずの出来だったのではと思います。各地から多数のご応募ありがとうございました。飛鳥資料館としては今後も写真コンテストを続けておこない、優秀作品等を収めた写真集などの刊行ができればと思っております。
今回応募された方々の撮影機材をみると、デジタルカメラでの応募が圧倒的に多く、機種もコンパクトデジタルカメラから高級1眼レフまでと様々でした。全般的に気になったのは、プリントがインクジェットプリンタでの出力が多いのですが、出力の際、画像処理を施し過ぎる物が多く見受けられました。彩度を上げたり、特定の色を目立たせようと思う気持ちはわからなくはないですが、画像処理がすぎると写真が不自然で作品の価値が逆に落ちてしまいます。また、時代の趨勢でしょうか、モノクロームの作品が数点しかなかったのが印象に残りました。
今回の写真展は「知られざる飛鳥の情景」というコンセプトのもと、見慣れた飛鳥の違った顔を期待していましたが、撮影対象が結構偏っていたように思えます。よく知られた飛鳥の景色や遺跡を題材にされている作品では、被写体が見やすい場所を選択するためか、似通った構図になる作品が見受けられました。周囲の観光客の視線が気になるところですが、思い切って見上げたり、近接したりするなど、視点を変えてみることで、見慣れた景色の違った一面を垣間見ることができるように思います。
発掘調査の現地説明会風景など、飛鳥らしいものもありましたが、画面の中にいろいろなものが入り込みすぎて、主題がうまく伝わらないものがありました。シャッターを切る際に、余分なものが邪魔していないか、一瞬、思い巡らしてみることをお勧めします。
飛鳥の写真は、多くの写真家が様々な視点から撮影しています。なかなか難しいことではありますが、それらの模倣ではなくオリジナルな視点を見いだせれば、面白い作品が生まれてくるのではないでしょうか。2回目以降のコンテストでは「新たな視点」に期待したいと思います。
(−知られざる飛鳥の情景−審査委員会)
入選作品
正一位 情景写真太政大臣 宮田 哲治様 「降 臨」
満々と水を湛えた棚田が重なり合う明日香村細川は、同村の中でも高い位置にある集落である。
その細川の集落の彼方に望む二上山に夕陽が入るとき、その赫赫たる輝きを受けて棚田は真っ赤に染まる・・・。
この光景がいわゆる細川の「定番写真」となる。その光景に出会うために、私自身も何年にもわたり数え切れないほど足を運んだ。
ただ今回の「飛鳥資料館」の写真コンテストは、「知られざる飛鳥の情景」というテーマで募集されたため、普段知られていない「細川の表情」を切り取った作品で応募した。
雲の割れ目からこぼれた光が「光芒」となって、細川の棚田に降り注ぐ一瞬を捉えた作品である。
まるで「農業の神様」が今年の豊作を約束するかのように、「姿」を見せられたように感じた。
従二位 古都写真大納言 風人様 「古宮有情」
古宮土壇の夕景は、その地下に眠る遺跡と共に私の心をざわめかせる。
地下1mの庭園遺跡に思いを馳せながらこの場所に立つと、飛鳥時代の様々な情景が心に浮かぶ。
きっと畝傍山や夕陽は、千四百年何一つ変わらない光景を見せているのだろう。
田植えを前にした僅か一日、鏡のような水面が姿を見せる。
夕刻、畝傍山のシルエットが際立ち、古宮土壇の木が水面に映り込む。
風も無く、夕陽が傾く頃、この場所に立てた事が幸せだった。
従二位 古都写真大納言 辻本 英明様 「雪の観音堂」
「知られざる飛鳥の情景」というタイトルから、飛鳥には知られざるところがあるんだろうか?という素朴な思い。
これだけ世に知られた飛鳥での知られざる情景。
そこで、年に数度しか降らない雪をモチーフに、橘寺周辺に絞りました。
短時間の降雪、降る雪を止める一瞬のチャンス。
しかし、この集中が、今回の受賞につながったことに、喜びはひとしおでした。
実を言うと、同時に応募した作品に、個人的には思い入れのある作品があったのですが、第3者から見た場合の評価と、個人の思いはそれぞれなんだということを知らされ、改めて写真の深さを感じました。
今後も精進し、飛鳥のよいところを探り出したいと思います。
従三位 景観写真卿 北野 武夫様 「棚田夕景」
この度私の作品が従三位情景写真卿に預り光栄に存じます
当初は棚田と夕日を撮るつもりでしたが、水田がきれいに輝きはじめたので、カメラを下げて撮り始めたところ、子供が二人駆けて来るのが目に映り、このチャンスを逃してはなるものかと、夢中でシャッターをきったのがこの一枚です。
全体のトーンがこんなに漆黒に仕上がっているとは思っていませんでした。
満足の一枚です。
従三位 景観写真卿 熱川 英明様 「飛鳥川、石走の秋」
「桜は撮られていますか」とのことですが,撮ってはいますが,なかなか思うようにはいきません。
先日は,大宇陀から東吉野に出かけました。
思うようにいかないことじたいそもそもあたりまえかもしれません。
想うような場所に立っても,そのときの天候,フレームにたまたま入るものなどにおおいに左右されるからです。一定の努力はしますが,後はチャンスが微笑むかどうかだと思います。あと私が大切にしているのは,「素直な気持ちの中,魅せられたもの・こと」です。
そしてそれらの結果を多くの人と共有できたらよりいいのですが。
従三位 景観写真卿 宮田 道様 「元気だよ!!」
写真を始めて数年、いまだに初心者です。
現在はある写真サークルの会員として勉強中ですが、写真の楽しさと共に、奥の深さを感じている昨今です。
今一番の楽しみは、休日を利用して各地を訪れ、「見る、撮る、食べる、触れる」を実践することですね。
まだまだ未熟な私ですが、心に感じた情景を素直に撮ることを心がけて、これからも写真を楽しみたいと思っております。
従五位 写真司

菊谷 光代様 「秋枯れの檜隈寺への道」

西島 国介様 「祝戸や飛鳥稲淵宮目指す」

岡 一彦様 「蓮花咲く奥飛鳥」

上田 由美子様 「雪の日の猿石」

西川 潔様 「橘寺 春」