四神の中でも玄武は、一般的に蛇が亀に絡みつく姿で描かれる。「玄」は北・冬を象徴する色である黒を、「武」は鎧をつけて武装している動物、すなわち亀を意味する。
キトラ古墳の玄武の亀の胴体はやや黄色味を帯び、甲羅は六角形の亀甲文で表現する。蛇の背中は、鱗(うろこ)を斜格子文(しゃこうしもん)で、まだら模様を濃色の斑点で表している。キトラ古墳の玄武は、ほぼ完全な姿で残っており、古代日本の玄武の図像を伝える貴重な資料である。
〈註〉
四神:古代中国にはじまる東西南北の方位をつかさどる4種類の神獣。天の四方の星宿(星座)や陰陽五行説による各方位、季節、色が対応している。