天井中央部に天文図が描かれており、天井の東西にある斜面部分には、東に金箔で日像、西に銀箔で月像が表されている。キトラ古墳の天井に描かれた天文図(キトラ天文図)は、天の北極を中心にした円形の星図で、360個以上の星々が金箔で表現され、それらを朱線でつないで表される中国星座は現状で74座確認できる。
キトラ天文図の大きな特徴は朱線で描かれた4つの大円である。3つの同心円は、内側から内規、赤道、外規を示し、もう1つの北西に寄った円は黄道を示す。これらの円は長期にわたる天体観測によって初めて理解できるもので、一部に間違いもあるが、この4つの円を備えることから、キトラ天文図は本格的な中国式星図としては世界最古の実例と評価される。
〈註〉
・内規:一年中地平線の下に沈まない星の範囲を示す。この中の星は季節を問わず、常に見ることができる。
・赤道:天の赤道。地球の赤道面を延長した際、天球と交わった部分にできる大円。
・外規:観測場所から見ることができる全ての星の範囲を示す。この円より外側にある星は地平線より上には上がらず、一年中見えない。
・黄道:天球上における太陽のみかけの通り道。太陽は1年で黄道を一周する。キトラ天文図では、黄道の位置が間違って描かれている。