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(50)X線CTで年輪をはかる

X線CTで年輪をはかる 世界初 非破壊で調査

 奈文研には、文化財に使われた木がいつ伐(き)られたものか、また昔の自然環境を年輪から調べる研究室があります。この年輪年代学の研究法については、第22回「探検!奈文研」で紹介しました。今回は年輪を測る最新装置を紹介します。

 木でできた文化財の中には、彩色や加工などで表面の年輪が見えないものも多く、それが悩みの種でした。年輪を観察できるように、スパッと切ってしまいたいところですが、貴重な文化財ではそうもいきません。

 そこで、登場するのがX線CT(コンピューター断層撮影法)という最新の装置です。X線CTというと、病院などにある医療用の装置を思い浮かべる方も多いでしょう。ところが、医療用のX線CTでは、1ミリ未満の細かいものを観察することができません。

 この問題を解決するために、奈文研では、精密な電子部品などを検査する産業用のマイクロフォーカスX線CT装置をベースに、木造文化財の年輪を非破壊で調査できる装置を開発しました。この装置を使うと、文化財の内部の年輪を輪切りの画像で観察・計測することができ、世界初の画期的な研究方法として、多くの研究者から注目を集めました。

 現在、この装置の活用により、神像・仏像彫刻、工芸品など、年輪年代学の研究対象は飛躍的に拡大しています。

 

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ヒノキでできた神像彫刻の頭頂部の画像。表面(上半分)は彩色や風食の影響で年輪が見えにくいが、
マイクロフォーカスX線CTによる断層画像(下半分)では、年輪が明瞭に観察できる

(奈良文化財研究所主任研究員 大河内隆之)

(読売新聞2014年4月6日掲載)