中国-河南省の文化財
河南省文物考古研究所との共同研究
 奈良文化財研究所では2000年度から河南省文物考古研究所との共同研究をおこなっています。テーマは黄河の支流である黄冶河沿いに分布する唐三彩の窯跡とその生産品についてです。

 唐三彩とは素焼きの陶器に緑、白、褐、藍色の鉛釉を施して二度焼きした装飾性の高い焼き物で、唐代(A.D.618~907)に発達し、朝鮮半島や日本の陶磁にも少なからぬ影響を与えています。日本でも遣唐使が持ち帰ったと思われる唐三彩が宮都や国府、寺院を中心に出土しています。鉛釉陶器は、7世紀後半代の日本に朝鮮半島から生産技術が伝わり、緑釉陶器として生産が始まりました。奈良時代に盛行する緑、白、褐色に塗り分けた奈良三彩と呼ばれる鉛釉陶器は、唐三彩の影響を強く受けていると考えられます。わが国における鉛釉陶器の出現と盛行を考えるうえでも、中国の唐三彩の製作技術、生産流通の解明は重要な意味を持っているといえます。

 2000~2004年度の第Ⅰ期共同研究では河南省鞏義市 大・小黄冶、白河村に所在する窯跡の調査によって唐三彩の窯跡、工房跡、関連遺構を発見し、中国十大発見にも選ばれる成果を挙げました。共同研究の成果は、それまでの試掘調査の出土品、採集品、盗掘押収品等の資料を整理した図録、中国語版『鞏義黄冶唐三彩』(2002年春)と日本語版『鞏義黄冶唐三彩』(2002年冬)及び共同研究での発掘品を整理した図録、中国語版『黄冶窯考古新発見』(2005年春)と日本語版『黄冶唐三彩窯の考古新発見』(2006年冬)の日中各2冊の図録として刊行しています。

 2005年度からは新たに第Ⅱ期5ヵ年計画として、調査地を黄冶河の上流に求め、白河水地河地区の調査を開始しました。白河地区では唐三彩の投棄土坑、唐代の白釉瓷器の窯跡などがみつかり、唐三彩の生産が黄冶地区だけではなく、白河地区まで及ぶことが明らかになりました。また、水地河地区では唐代よりも古い北朝(北魏~隋代)の大規模な青釉瓷器の窯跡が見つかり、黄冶窯の唐三彩生産の黎明期を解明するうえで重要な発見が相次いでいます。

小黄冶Ⅲ区の調査区。窯跡は黄治河の河岸段丘上に立地する。


小黄冶Ⅲ区の調査で見つかった唐三彩を焼いた窯。
小規模で奥に煙道をもつ。手前が焚き口。


これまでに刊行した共同研究の成果。日中各2冊の図録