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(125)版築

土砂つき固め 塔の基礎に

 奈良のお寺には、古いお堂や塔が数多く残されています。よく見ると、そうした建物の多くは地面から一段高い土台の上に建っています。この土台を基壇とよんでいますが、基壇の多くは人工的に土や砂をつき固めて作ったものです。

 土や砂をつき固める技術は版築とよばれ、古代中国で発明され、6世紀の終わり頃に日本に伝わりました。版築の方法は、土台とする場所に、土や砂を均一の厚さに敷き詰め、およそ半分ほどの厚さになるまで、突棒(つきぼう)という重くて細長い棒でつき固める作業を繰り返します。固めにくい土の場合、石灰などを混ぜることもあります。

 例えば、高さ1メートルの基壇をつくる場合、厚さ10センチに敷いた土を、5センチ位になるまでつき固める作業を20回ほど繰り返すことになります。突棒の直径はわずか10センチほど。それで大きな基壇の全面をつき固めていくのですから、とても根気のいる作業で時間もかかります。

 しかし、こうして出来上がった版築はコンクリートのように固くなり、お寺のお堂や塔などは何百年と倒れることなく、立っていられるのです。今度、お寺などへ出かけたら、建物だけでなく基壇も是非見てくださいね。そこには古代の技術がぎゅっと詰まっていますよ。

 

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国宝・薬師寺東塔の基壇版築(奈良市で)  

(奈良文化財研究所主任研究員 青木敬)

(読売新聞2015年11月29日掲載)

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