X線で細部明らかに
遺跡から出土する金属製遺物の中には、サビに覆われ、本来の形状がわからなくなったものや、複数の遺物がサビで互いにくっついてしまったものがあります。
こうした遺物の調査には、X線CTという装置が大活躍します。X線CTは、コンピューター断層撮影法と呼ばれ、物質を透過するX線の性質を利用して、対象物の内部や構造を調べる方法です。
さまざまな方向から遺物にX線を当ててデータを集め、コンピューターで処理します。すると、遺物の内部の構造が、手に取るように明らかになります。観察したい部分の断面画像を自由に作ることもできます。
写真は、京都府長岡京市の長岡京跡で出土した、銭の穴に紐(ひも)を通してまとめた「さし銭」です。サビて銭同士がくっつき、銭の種類や正確な枚数がわかりません。そこで、X線CTで調査することにしました。
その結果、枚数が72枚と判明。スライス画像に「和同開珎」「万年通宝」「神功開宝」の文字が現れ、奈良時代の3種類のお金であることがわかりました。
このように、遺物を壊すことなく、見えないところも見えるようになるなど、文化財の分析技術や機器の進歩には目ざましいものがあります。
(上)長岡京跡で出土したさし銭(長岡京市教委所蔵)
(下)X線CTのスライス画像で浮かび上がった「神功開宝」の文字
(奈良文化財研究所研究員 脇谷草一郎)
(読売新聞2015年10月4日掲載)